近年、効率的な学習形態を実現するeラーニングの普及が著しいなか、その学習効果をより高めることが求められています。
当社では、これまでもアニメーションの活用などに取り組んできましたが、新たな施策として、2016年10月より、脳科学知見の適用を推進しています。
脳科学は、記憶・学習に直結する「脳」の機能に関する学問であり、学習効果と関連のある研究も数多く行われています。
記憶のメカニズムに関する研究から、学習には「注意」と「情動(一過性の心の状態)」が関わっており、人の注意を引き、情動に響くものは記憶に残りやすい、ということが分かっています。
そこで、「注意」と「情動」を中心とする、学習に適用できる知見の収集・整理を、(株)日立製作所 基礎研究センタとの共同作業により進め、より実効性が高いと思われるものを抽出し、「コース開発指針」としてまとめました。
そして、開発指針をeラーニングの開発工程に適用した「eラーニング開発ガイド」を用いて、コース開発を行っています。これにより当社のeラーニングコンテンツは脳科学知見に基づいた、記憶に残りやすい、高い学習効果が得られるものになっています。
長時間のコンテンツは集中維持することが難しいイメージがあります。
当社でも、時間が長い動画ほど、途中で飽きてしまい、学習をやめてしまう受講者が多いと、想定していました。
しかし、当社動画コンテンツの再生完了率(最後まで学習して100%)を調査したところ、動画の長さと再生完了率の相関は弱く、全体にバラついていました。
そして、再生完了率が高いグループの動画と、低いグループの動画とを比較すると、再生完了率が高いグループの動画は脳科学知見が適用されており、低いグループは適用されていませんでした。
このことから、実際の受講データからも、脳科学知見が有効であることがわかります。
脳科学知見の適用のうち、代表的な取り組みを2つ、ご紹介します。
「視覚的手がかりがあった方が学習効果が得られる」「手がかりがあるほうが凝視時間が延びる」といった知見から、学習ポイントに、視覚的手がかり(「矢印」「ハイライト」「枠」等)を用いています。
下記例では、説明に合わせて、ポイントを枠で囲み、注意を促しています。再生して、その違いを実感してください。
「人間的な動作をするエージェントがいると学習効果が高まる」「情動を喚起させると記憶に残りやすい」といった知見から、講師映像の活用に取り組んでいます。
下記例では、講師がeラーニングの画面に登場し、感情を込めて語りかけるような口調で説明することにより、情動(親近感・一体感)を喚起しています。再生して、その違いを実感してください。
クロマキー合成(映像の一部に、別の映像を合成する技術)を取り入れ、講師の挙動と説明資料とを同期させることで、学習者の注意の獲得と情動への働きかけを、より効果的にしています。
また、コース内の演習では、受講者から多く質問される事項をピックアップし、動画の中で受講者役の人物が講師に質問し、対話形式で解説を進めることで、情動に働きかけています。
学習の節目にクロマキー合成による講師映像を盛り込み、受講者に向けて問いかけ、学習を促します。 挨拶、名刺交換、プレゼンテーション等、ビジネススキルのデモンストレーション動画や、文書作成のミニ演習等、ビジネススキルに対する理解を深め、知識定着に結びつける工夫を随所に取り入れています。
2016年10月~の受講者アンケートによると、脳科学を適用したコースのほうが、わかりやすさや満足度の観点で、高い評価を得ています。 これからも、脳科学知見に基づいた、記憶に残りやすい、高い学習効果が得られるeラーニングの提供を進めてまいります。