- 社員一人ひとりのアップスキリング・リスキリングを支え、日立のジョブ型人財マネジメントを加速させる、新しい「学びの支援」とは -
日立グループでは「ジョブ型人財マネジメントの転換」 に向けて、グループ全体でさまざまな取り組みを実践しています。そのひとつが、2022年10月より日立グループ向けに導入予定の学習体験プラットフォーム(LXP)「Degreed(ディグリード)」です。本記事では、「Degreed」の国内普及を担う株式会社ディーシェの代表 栗原良太さまをゲストに迎え、日立アカデミーの社員2名と行った鼎談の内容をレポート。世界各国で普及が進むLXPを国内でいち早く導入した日立グループの狙いや、そこから期待できる社員一人ひとりの「学び」の向上や学習方法の変化についてなど、さまざまなテーマでトークが繰り広げられています。 (※本件は、日立グループ限定のサービスです。)
株式会社日立アカデミー 松田 欣浩
ビジネスパートナリング本部
担当本部長
株式会社日立アカデミー 石川 豊臣
事業戦略本部 自律学習推進センタ
センタ長
株式会社ディーシェ 栗原 良太さま
代表取締役
テーマ1
「ジョブ型人財マネジメント進展」の背景について考える。
ジョブ型の推進にあたって、企業と社員の関係はどう変化していくのか。
栗原
2018年に公表された経済産業省の研究会の報告書では、個人においても企業においても、キャリアオーナシップが重要になってくるということが提言されています。 2019年に新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが起きて以降、日本でもビジネス市場や人々の働き方が急速に変化しましたが、それよりも前から、自分のキャリアについて自ら考える重要性が叫ばれていたわけですね。
松田
日立グループがめざしているのは、「イノベーションを生む組織と人財の実現」。その取り組みのひとつが「ジョブ型人財マネジメント」への転換です。 ジョブ型とは、「企業と個人が仕事をキーとした対等なパートナーであること」を大切にした働き方を意味します。
これまでは、企業が社員の特性を見ながら仕事を任せることが多かったと思います。しかしこれからは、企業は必要なポストや仕事を明示し、社員は自ら手を挙げることで自分自身のキャリアを形成していく流れになるはずです。「自分はどんなキャリアを築きたいのか」「将来どうなりたいのか」を、社員一人ひとりが真剣に考えることが重要になってきます。
栗原
これまでの日本企業ではキャリアは一本道が主流で、社員はキャリアを意識しなくても自分の道を進んでいました。 しかし、グローバル化やデジタル化による社会の変化、人生100年時代とも言われる少子高齢社会化などの影響によって、従来の価値観を大きく変えるべきタイミングがきたのだと感じます。
松田
一人ひとりが自らのキャリアを考え、それぞれの夢や目標に適したスキルを得るためには、常に「学び」を続け、自らをアップデートすることが、これまで以上に必要となるでしょう。
そこで日立アカデミーでは、より良い学習環境を社員へ提供するためにどうすべきかを改めて考えました。一人ひとりの異なる学習ニーズにどう応えていくのか、社員が「学び」を続けるためにどのような支援や環境が必要になってくるのかなど、さまざまな課題と向き合う中で、新たな取り組みや支援が必要だと判断したのです。
テーマ2
「学び」への新たな支援が必要だと感じる中で、日立アカデミーが重視したものとは。
業務の中に埋もれていた「学び」に、さらにフォーカスしていく。
松田
従来の「学び」と言えば、「研修に参加する」などの方法をイメージする方が多いと思います。業務から一旦離れ、教室や会場などに足を運び、そこで具体的な知識やスキルを身につけて仕事に生かす......しかし、ビジネス環境が急速に変化する現代では、業務遂行を通じての学びが今まで以上に重要になってきます。
石川
総務省の統計調査によると 、日本における社会人の平均勉強時間は1日「6分」。さらに、1日の勉強時間が「0分」という人が全体の95%以上を占めることもわかっています。あくまで国全体の調査なので、日立グループで統計を取ると多少変動するかもしれませんが、この「勉強時間がまったく取れていない層」、あるいは「自分で学習しているものの学習だという認識がなく、統計的に埋もれてしまっている層」にどうアプローチするかが、日立の成長をめざす上でも、個人のキャリアを形成する上でも非常に重要だと考えました。
松田
社員一人ひとりの視点に立って考えると、「学び」が得られる方法は研修だけに限りません。例えば、業務遂行のための情報収集や、上長やチームとのコミュニケーションを通じた「学び」もあるわけで。これまで日立アカデミーは、研修という形式的な教育の場を提供してきましたが、ジョブ型を推進するにあたり、まずは「学び」の定義を多角的に広げることから始めました。
栗原
松田さんのおっしゃる通り、日々の仕事から得られる「学び」は非常に多いですよね。もちろん、何十人、何百人もの方が同じ場所に集まり、指導者から直接教わる研修でもたくさんの「学び」が得られます。でも、それだけですべての仕事がこなせるかと言うと、決してそうではありません。細かな業務内容などは上司や同僚から教わる部分も多いでしょうし、わからないことに直面した際に、自分で調べて覚えるということなども、必ずみなさん経験しているはずです。
松田
正にその通りです。仕事に取り組む中で「もっと深く知りたい」「わからないから情報を得たい」「誰かに話を聞きたい」などと感じる場面が、誰しもあると思います。そして、その疑問や課題が解消されたとき、「わかって嬉しい」「できて良かった」「もっと知りたい」といったプラスな気持ちが生まれますよね。自分の成長を実感した瞬間や、そこに至るまでの過程を「学び」と捉えることも、非常に大切だと感じます。
栗原
日本で社会人の方に「これまでに何を学んできましたか?」と質問すると、学歴や資格の有無、受講した研修について話す方が多い傾向にあります。でも、仕事で何に取り組んできたのか、どれだけの量や種類の書籍を読み込んできたのか、どんな資料をつくりあげてきたのか、どれほどの規模や数のプレゼンを実施してきたのかなどの経験も、その人が培ってきた立派なキャリアやスキルです。そうした日々の仕事の中に埋もれてしまっている「学び」をきちんと記録して見える化していくことが、これからは重要になってくると思います。個人にとっては、自分の取り組みを示す材料になりますし、企業にとっては自社のナレッジや人材開発に関するデータが蓄積されることになります。
石川
日立アカデミーは研修所ですので、これまでは集合研修やeラーニングの参加者など、学習の場へ来る人へのアプローチが中心でした。しかしそれだけでは、勉強時間がまったく取れていない層や日常の業務の中で学んでいる人々に働きかけることはできません。また、勉強することを強制的に感じたり、重荷になってしまったりする方法では、ジョブ型に込めた思想と相反してしまいます。本当の意味で「ジョブ型人財マネジメント」を浸透するには、社員一人ひとりが自ら学びたいと思える環境を整えることが不可欠。どんな方法がベストなのかを調べるうちに、LXPが選択肢に上がったのです。
テーマ3
学習体験プラットフォーム(LXP)「Degreed」について。LMSとの違いとは。
グローバル企業の進化・成長に欠かせないLXP。国内で先駆けて、日立が導入に踏み切ったワケ。
石川
2022年10月に導入予定のLXP(学習体験プラットフォーム)は、「Degreed」というソリューションを活用します。私たちがこれまで使用してきたLMSとの違いを含めて、改めて栗原さんからご説明いただけますか。
栗原
ありがとうございます。日本でも広く普及しているLMSは「Learning Management System」の略称で、「学習管理システム」などと呼ばれています。主に管理者側視点のソリューションで、研修の提供・管理・運営などをスムーズにする目的で導入されることが多いですね。
一方、今回導入するLXPは「Learning Experience Platform」の略称で「学習体験プラットフォーム」と訳されます。LXPは学習者目線を大切にしながら学習の機会を提供するソリューションです。ビジネス誌「フォーチュン」が選ぶ急成長企業100社のうち、4割近くがLXPを活用するなど、特に海外で普及が進んでいます。
今回、私たちが日立グループにご提供する「Degreed」は、LXPの中でも草分け的な存在です。エリクソンやマスターカード、ユニリーバなど、多数のグローバル企業で導入実績があります。しかし、LXPを本格的に導入している企業は日本ではまだ少なく、日立グループの導入は国内企業としては一番大規模な導入となります。
石川
日本と海外で普及に差があるのは、働き方の違いも影響していると思います。だからこそ、さらなるグローバル化を見据え、ジョブ型を推進する日立グループに適していると考えています。
本格的な導入を前に、2022年1月?4月に日立グループ社員300人を対象としたPoC(Proof of Concept/概念検証)を実施したところ、全体の3分の2以上の方が「部門全体で導入したい」「たとえ利用料が自己負担であったとしても使い続けたい」など、導入に関して非常に前向きで肯定的な意見が多くありました。他にも「自発的に学びたいと思えた」や「以前から克服したいと思っていた分野の知識が身についた」など、学習意欲に結びついたという意見や「時間をつくって研修に参加するには少し気後れしていたけれど、これならPCを使って空いた時間に勉強できるので良かった」といった、「学び」に対する気軽さを評価した意見も集まっています。
松田
日々の仕事をこなしながら研修を受けるとなると、時間的な制約や費用の負担が生じたり、社内で承認を取るプロセスが発生したりと、さまざまなハードルを社員が感じていることがわかっています。継続的な学びを維持するためには、そうしたハードルを可能な限り取り除くことも重要であると考えていたので、「空いた時間にできる」「気軽に学べる」といった評価が得られたのは非常に喜ばしいですね。
テーマ4
「Degreed」の効果的な使い方や注目してもらいたい機能について。
自分の興味や関心が「学び」につながり、他者への関心や交流が「成長」のきっかけになる。
栗原
「Degreed」では、日立アカデミーがこれまで研修として提供してきた学習ツールやLinkedInラーニング(リンクトインラーニング)のコンテンツをはじめ、Web上に存在するさまざまな学習アイテムと連携して学習することが可能です。研修動画を視聴したり、記事を読んだりと、数分で閲覧が完了するものから数時間かけてじっくり学ぶものまで、多様なコンテンツを学ぶことができます。
LXP(Degreed)ホーム画面
松田
担当している業務やマネジメントに関する学習をはじめ、語学やビジネススキルに関する学習など、幅広いコンテンツがありますよね。「勉強したいと思ってはいるけれど......」と、意欲はあるもののなかなか取り組めていなかった学習にも挑戦しやすくなると思います。
また、始めに強化したいスキルを登録しておけば、それに応じたコンテンツが自動で表示されるのも特徴のひとつです。利用者が増えるほどAIの精度が上がり、表示されるリコメンド機能の正確性も上がってくるので、まずは「ちょっとやってみようか」「次の会議までに時間があるから気になっていた動画を閲覧しよう」といった、気軽な気持ちから取り組んでみてほしいですね。そして、自分と似たようなスキルを学ぼうとしている社員や志向性の近い社員を一覧で確認もできるのも、活用していただきたい機能です。気になる人をフォローし、その人の学習履歴を閲覧して自分の「学び」の参考にすることができます。
LXP概要
栗原
一人だけで成長を続けるには、どうしても限界があります。一緒に学ぶ仲間がいて、お互いに刺激や影響を与えあうことで得られる成長が必ずあるはずなので、メンバーのフォロー機能は意欲的に活用していただければと思います。
松田
今後は社員同士が互いに学びあう機会や有識者と共に学べる機会なども積極的に提供できればと考えています。
栗原
ただ、一般的に「自分の学習履歴を会社や社員に公開したくない」と考える人は少なくありません。私も、最初は自分が何を学んだかを公開するのが恥ずかしいと感じていました。でも今は、すべての学習履歴をオープンにしています。慣れてくると、驚くほど抵抗がなくなるんですよ。それに、お互いの学習履歴を見せあうことで「自分と似たようなことを学んでいますね」「オススメのコンテンツなどはありますか」といった新たなコミュニケーションが生まれるきっかけにもなります。
さらに、「憧れている方の学習履歴がチェックできる」「尊敬している上司が何を学んでいるのかがわかる」ことは、学習意欲の向上にもつながるはず。他者とのコミュニケーションを起点に、それまでまったく関心がなかった分野の学びに興味を持つようになったり、自分の知りたかった情報を得られたりもしますから、みなさんどんどん学習して、その内容を公開していただきたいですね。その情報が、さらに他の誰かの「学び」のきっかけにもつながっていきます。
松田
ジョブ型人財マネジメントの推進に対して、不安を感じる方もいるかと思います。しかし、ジョブ型によって「学び」の定義が変わり、今まで仕事で当たり前に取り組んでいたことも「学び」として評価されるようになると考えれば、感じ方も変わってくるのではないでしょうか。
日立グループには多くの社員が在籍しています。 一人ひとりが学んで得た個人の「知」は、その人のキャリアを形成すると共に、日立グループという組織としての大きな「知」に育つことにつながります。そのためにも、日立アカデミーは学習する方がより学びたくなる環境を、これからも提供し続けていきます。
※本件は、日立グループ限定のサービスです。