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株式会社 日立アカデミー

リアル世界に付加する価値との"際"を考える

- 価値を使い熟すために注目しなければならない観点 -

2024年4月8日'ひと'とITのコラム

リアル社会において、サービスは豊かな社会の実現や課題解決に向けて日々アップデートされています。新しい技術や世の中のトレンドをいち早く取り入れ、サービスを改善したり新しくサービス化することで、より付加価値が高まります。しかし、その変化の過程で時には思わぬ副作用が起こっているようです。
今回のコラムでは、「リアルな世界の"際"に目を向けて、"際"の向こうにあるものがどのような特徴があるかを見極めること」(※1)をいくつかの"際"を例に考えてみましょう。 (コラム担当記)

(※1)コラムより引用

 2024年3月16日にJR各社の時刻改正が行われました。JR各社だけでなく、ほとんどの鉄道事業者が同日にダイヤ改正を行っています。今では同日のダイヤ改正は当たり前ですが、昔は鉄道事業者毎に改正日は異なっていました。これは同じ日に改正する必要がなかったので、各事業者の都合を優先できていたということです。ところが今は多くの鉄道事業者が相互乗り入れを行っていたり、直接乗り入れないにしても特に終電の接続が緻密化しているので、一斉に改正せざるを得なくなっています。この相互乗り入れという仕掛け、乗り換え無しに移動できるので利便性はかなり高まりました。しかし、便利さの陰には副作用もあります。路線によってですが目的地に向かうのにどの電車に乗れば良いのかわかりにくいケースが発生しています。例えば昨年3月に、新横浜駅を通じて相鉄線と東急東横線との相互乗り入れが始まりました。これに先立つ2019年に相鉄線は〈相鉄線~武蔵小杉~大崎~渋谷~新宿~池袋~大宮~川越〉のルートで、JR東日本埼京線と相互乗り入れを開始していました。ここに新たに東急東横線と接続され、さらにその先で都営三田線、東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道線、東京メトロ副都心線・東武東上線・西武池袋線とつながり、電車の行き先表示だけではどの電車に乗れば良いのか、即座に判断することが難しくなりました。さらに、武蔵小杉、渋谷、池袋、川越はJR乗り入れ電車も東急乗り入れ電車も通っているので、注意して乗る電車を選ばないと着いた先のホームが異なっていたり(例えば渋谷駅ではJR線は地上、東急線は地下)、運賃も異なっているのでややこしいことになります。さらに東武東上線にも乗り入れる電車には"川越市"行きの電車もあり、時間帯によっては行き先掲示板に(JR経由の)"川越"行きと東急~東武東上線経由の"川越市"行きが並んで表示されることがあります。ちなみに、"川越市"駅は"川越"駅の次駅で1Km弱離れています。似通った駅名には他にも新宿(JR)と新宿三丁目(東京メトロ副都心線)、赤羽(JR)と赤羽岩淵(東京メトロ南北線)があり、首都圏迷路状態です。(ここまでの話は、路線図のイメージがないとわかり難いと思いますので、興味・お時間のある方はネットなどで鉄道路線図を見てもらうと、何を言っているかを少しは実感して頂けると思います・・・。) もうひとつの副作用は、湘南新宿ラインや東京上野ラインが開通してからネットなどでも話題となりましたが、例えば埼玉県の東武東上線で事故などの障害が発生すると、その影響が神奈川県内相鉄線にまで及んでしまうことです。電車の運行範囲が拡がればどうしても付いて回ってしまいます。埼玉の事故が神奈川にまで影響するだけでも広範囲だと思いますが、この影響の広範さの極みが先日ネットで話題となっていました。昨年の12月12日、JR西日本列車運行情報に次の文面が載りました。『12月12日9時0分現在: 東海道線:藤沢駅で列車がお客様と接触したため、次の特急やくも号に遅れがでています。【岡山⇒出雲市方面】・やくも1号(出雲市行き) 約20分遅れ』。「特急やくも」は、岡山~倉敷~(伯備線)~米子~出雲市間の岡山県・鳥取県・島根県を通る山陽・山陰を連絡する特急です。この情報を見るのは主に中国地方の人たちです。当然「神奈川県の藤沢?」となります。遙か彼方の神奈川県での接触事故の影響が、岡山県他に影響を及ぼしているということです。なぜか? 現在唯一運行されている夜行列車「サンライズ瀬戸・サンライズ出雲」が介在しています。「サンライズ瀬戸・サンライズ出雲」は夜東京駅を発車して翌朝岡山駅で切り離し、「サンライズ瀬戸」は高松、「サンライズ出雲」は出雲市に向かいます。この日は東京発車時に藤沢駅の接触事故の影響を受けたため岡山駅到着も遅れ、その影響で「特急やくも」も遅れが生じたということです。旅慣れている人や鉄道に興味を持つ人以外がこの文面を読むと不思議に思いますよね。ちなみに余談ですが、この「サンライズ瀬戸・サンライズ出雲」もJR東日本~JR東海~JR西日本・JR四国に乗り入れる列車です。では運行主体はどこか?この寝台列車の車両は285系という電車なのですが、この車両はJR東海とJR西日本の所有です。JR西日本は首都圏から出雲などへの利用者目当てであることは一目瞭然ですが、JR東海は? 一番の都市圏である名古屋駅は深夜帯のため上りも下りも停車しません。すなわち利用者からの収入が目的ではありません。実はJR東海の区間は結構距離が長いので、自前で車両を準備したとしても「線路使用料」というおいしい収入が見込めるということです。身近にあるサービスでも見えないところに意外なビジネスモデルが存在しています。

 ここまでは鉄道ネタで別にオチはありません。ダイヤ改正の話に戻します。
 今回のダイヤ改正で思わぬ注目を浴びたのが、JR東日本京葉線の快速運転の廃止でしょう。従前は蘇我駅⇔新木場駅間が無停車という通勤快速電車が走っていましたが、それが全面撤廃されるというものです。この計画が公表された途端、蘇我駅以遠を中心に困惑⇒怒りの声が噴出し、千葉県や千葉市の自治体からも遺憾の意が示されて政治問題的な様相となりました。通勤快速と各駅停車の時間差は20分と言われましたが、実際は各駅停車が途中の駅で快速電車を待避する時間がありましたから、それらを除くと約10分のプラスとなるようです。なぜ快速電車を無くすのか?JR東日本の説明では、快速電車と各駅停車の混雑状況の平滑化とコロナ禍以降リモート業務の普及等による乗客減少への対応などが主な理由のようです。この変更で注目を浴びたのが蘇我駅からの乗車時間が長くなることによるさまざまな影響が大きいことでした。確かに10分とはいえ移動時間が長くなれば家を出る時間も早くしなければなりませんし、子育て世代では保育園などへの送り時間が変わることなど大きな変化が生じます。人は変化を嫌う動物なので、特に"悪い方向"への変化は、余計不満感につながることになります。ただマスコミ等ではあまり触れていませんが、東京への通勤客が増加傾向にある蘇我駅から東京駅側の沿線からは、通勤電車の待避時間が減ることと実質電車本数(乗車機会)が増えることによるメリットがあるということで歓迎する声も出ているようです。一部マスコミや自治体などからJR東日本に対し、もっと沿線の声を聴いて欲しい旨要望が出されていますが、京葉線沿線全体の声を聴けば聴くほど二律背反的な事になるのは目に見えていますので難しい舵取りとなりそうです。個人的には、快速を減らすことを是とするならば、今回の件は一気にやり過ぎたのではないかと思っています。通勤快速をまず快速とし、数年かけて快速も減便していく・・・先ほども触れたように人は変化を嫌いますから、変化の度合いを小さくして徐々に慣れていくしかないのではと思います。

 この話は、単に利便性が低下する、ということだけではなく、"街(土地や家屋)の価値が、一企業のビジネスに大きく依存している"という現実を、改めて認識させられます。昔から宅地などの広告で「最寄り駅は急行停車駅なので、都心へ**分圏内で便利です」といった文言がよく並びます。購入を検討する人は、そこに価値を見出します。すると地理的には都心に近い土地で急行が停車しない駅周辺よりも価格が高くなることも起きます。これってある意味「虚像」です。この「虚像」を国家プロジェクトとして推し進めたのが、田中角栄氏が1972年に『工業再配置と交通・情報通信の全国的ネットワークの形成をテコにして、人とカネとものの流れを巨大都市から地方に逆流させる "地方分散" を推進すること』、すなわち日本列島を高速道路・新幹線・本州四国連絡橋などの高速交通網で結び、地方の工業化を促進し、過疎と過密の問題と公害の問題を同時に解決する政策綱領として発表した「日本列島改造論」でしょう。この具現化のひとつが新幹線で、現在も建設が進められています。ただし、当時の事業主体が国鉄(日本国有鉄道)だったものがJR民営化となり、特に地方での新幹線の採算指標が重視されるようになったことから、日本列島改造論と現在の新幹線計画は必ずしも同じ"夢"を見ているとは言えません。新幹線通勤ということが注目を浴びたことがあります。新幹線が時間と距離の格差をなくしたので通勤圏が拡がり、当該の街では地価も高くなりました。新幹線が作り出した"虚像"です。鉄道の敷設の場合は、基本的には永続性が感じられます(余程利用者がいなくなれば廃線ということもありますが、新規に敷設される場合は、そこそこの利用者が永続するところに敷設されるので廃線になることは考えにくいと言えます)。しかし、今回の快速か各駅停車かという"電車の種別"は鉄道の敷設とは異なり、鉄道事業者の意向で柔軟に変えることが出来るものです。鉄道事業者以外の例えば不動産屋が「快速停車駅、都心より**分、便利です!」と謳ったとしても、今回のように鉄道事業者が変えてしまえば簡単に価値の前提が崩れてしまいます。場合によっては地価も下がります。今まで都心からは遠いけれど快速が停車するから快速が停車しない都心に近い場所より地価が高かったものが、逆転することもあるでしょう。でもこれ、逆転ではなく本来の都心からの距離にもとづくリアルな地価に戻っただけです。鉄道サービスという柔軟性に富んだ効能がリアル世界の価値を左右しているということです。

 リアルな世界に価値を付加するサービスの永続性の有無は、その価値を利活用するうえで重要な要素なのですが、永続性そのものを意識することはなかなか難しいと思います。しかし、リアルな世界の"際"に目を向けて、"際"の向こうにあるものがどのような特徴があるかを見極めること、これを避けることは出来ないと思います。


 別の話です。
 これを書いているときに大きく報道されているのが紅麹を使ったサプリメントの問題です。多くの方々が亡くなったり入院したりして、社会に大きな不安を与えています。この問題そのものに触れるつもりはありませんが、ちょっと気になったのが、当該サプリメントが「機能性表示食品」だったことに対するマスコミなどの対応です。今回の件は、「健康のために飲用するサプリメントで重篤な健康被害が出るとは思いもしなかったし、特に機能性表示食品であったことで"信頼"もしていた」という声に対し、多くのワイドショー的番組で複数のコメンテーターから「機能性表示食品がよく分からない」とか「特定保健用食品(トクホ)と何が違うのか分からない、紛らわしい」といった発言が堂々とされていることに違和感を受けました。

  • 〔特定保健用食品〕
    『特定保健用食品は、からだの生理学的機能などに影響を与える保健効能成分(関与成分)を含み、その摂取により、特定の保健の目的が期待できる旨の表示(保健の用途の表示)をする食品です。
    特定保健用食品として販売するには、食品ごとに食品の有効性や安全性について国の審査を受け、許可を得なければなりません。(健康増進法第43条第1項) 』
  • 〔機能性表示食品〕
    『機能性表示食品制度とは、国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができる制度です。
    特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります。』

 さて、ワイドショー的番組に呼ばれるコメンテーターは、その道のプロではないにせよ一定の見識をもってコメントする立場の人たちだと思います。しかし、そういう人たちがテレビで「機能性表示食品って何?」と発言してしまう。今、私の手元に「機能性表示食品」として届けている某サプリメントがあります。そのパッケージには "届出表示"として含んでいる成分の何が、どのような機能が報告されているか と、『本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。』という「機能性表示食品」の説明が印字されています。この表示を購入者がきちんと読んでいれば、少なくともトクホではないことやトクホと何が違うのかはわかります。先のコメンテーターの発言は「機能性表示食品」の制度が分かり難いのではなく、コメンテーター自身が分かっていないだけです(なんとなく社会的問題となると、国の制度などを批判すれば良いという流れを感じてしまうのは、私の偏見かもしれませんが・・・)。あたかも消費者に身近な制度について、消費者自身が何もしなくても知っていなければ(理解していければ)、その制度はおかしいというメッセージになります。せめて「自分はいままで「機能性表示食品」について知らなかったので、よく調べます。」という発信が欲しかったと思っています。

 このケースは健康を意識している消費者の日々の生活というリアルな世界に「機能性表示食品」という制度が価値を付加しているのですが、その"際"で何が起きているのか?「機能性表示食品」の仕組みでリアル世界側の消費者がきちんと理解・納得するために先述の「表示」を義務付けています。購入する消費者はこの「表示」を確認する事が前提で、これが"際"です。ところが、第53回のコラム『ITリテラシーと日本人気質 - マイナンバーカードを巡る"騒ぎ"に見え隠れする日本という国の深層 -』などこのコラムでも何回か触れていますが、先ほどのコメンテーターの発言からもわかるように日本では国や企業などが制度や仕掛けを提供すると「与えられるもの」という受け身の姿勢からどうしても抜け出せません。 "際"の前提が成り立っていないということです。よく日本人は欧米人と比べて「権利と義務のバランス」が欠如しているとも言われます。しかしこの先付加価値の仕掛けがますます増える時代です。"際"の存在と"際"との向き合い方を、与えてもらうのではなく自らが意識するという観点から逃れることは出来なくなります。


 さらに別の話です。
 3月16日に北陸新幹線が敦賀まで延伸したこと、北陸応援割が開始されたこと、さらに春休みであることなどが相俟って、北陸地区のJR各駅のみどりの窓口に連日長蛇の列ができているというニュースが3月28の夕方に流れました。JR福井駅を取り上げていましたが、窓口付近には券売機が7台設置されていますが、多くの人が窓口に並んでしまうので時間がかかるというものです。利用客の声として、

  • 〔窓口に並んでいる人〕
    「行列でも(窓口に)並んで買います。券売機だと操作が難しかったり、迷っちゃたりするので、みどりの窓口で買いました」
    「自分1人だったら(券売機で)するんですけど。子連れなので、確実に席を取りたいのと、不慣れですからね」
  • 〔券売機を使った人〕
    「窓口は並んでいる印象が強いので、券売機を優先します。慣れた方が楽ですね」
    「ネットで予約してたんで。それを取りに来た。すぐ受け取れる」

 最近は、人手不足などの影響やネットでの購入機会の増加などを踏まえ、全国的にみどりの窓口を減らす傾向にあります。今の時期は先述のようなイベントが重なっているので利用客が集中している面があり、恐らく通常時はみどりの窓口利用者が長蛇の列になることは限られるため、そう簡単に窓口対応の人員を増やすわけにもいきません。しかし、今回のニュースを見るとなかなかスムーズに券売機やネットへの誘導が進まない現実も見えてきます。私もみどりの窓口を使うことはなくなりました。さすがに最初券売機を使ったときは若干の戸惑いは感じましたが、指定席を座席表から選ぶ分かりやすさや、選択に困ったときに窓口だと係の人にあれこれ頼む申し訳なさなどを感じることも無く、時間的にも気持ち的にも楽だと感じています。しかし多くの人が券売機=操作が難しいという先入観から逃れられないのが現実でしょう。これは指定席の券売機だけのことではなく、銀行のATMも同様でした。日本では1969年東京・新宿(東京)梅田(大阪)に設置されたのが最初で、55年経っていますが、いまでもATMではなく窓口での手続きを望む人が一定数存在しているのが実情です。銀行側としてはさらにATMへの移行を促すために、窓口を削減・閉鎖する動きや、インターネットバンキングなどへの移行のためにATMそのものも削減する動きが出ています。

 この話、「人は変化を嫌う動物」という側面と、「新しいことに挑む強い不安感」という側面が根幹に潜んでいます。変化を嫌っていると、この話では窓口に並ぶという視点しかなく、券売機の存在すら見えていない人も多いのでしょう。窓口で係の人に要望を言えば良いというアナログに慣れていることと、アナログの柔軟性が安心感につながっているのかもしれません。ATMの例を待たずして、現代はデジタルの恩恵をリアルの世界で受けることが前提です。この"際"は券売機などの端末です。所謂インターフェースですね。恐らく"簡単な操作"をめざすだけではダメで、利用者の心理的な"壁"をいかに低くするかが求められます。利用者は企業や業種・業界を超えて、さまざまな"際"(端末)を使い熟していかなければなりません。ということは取り組む側も企業や業種・業界を超える観点での取組が必要でしょう(一部では始まっていますが・・・)。理想は、消費者が扱う端末が、すべて感覚的に同じ操作と感じることが出来ればかなりハードルが下がりそうです。実はこの具現化は、ATMや券売機のような端末よりは、スマホを活用した方が容易な気がします。現在はスマホのアプリも企業毎に提供されているので統一的な操作は実現されていませんが、ひとつのアプリで必要となるすべての"際"で自分に合った統一的な操作を行い、そのデータをそれぞれ(駅や銀行)に設置されている端末で拾う。デジタルとの"際"が、自分に最適化されたスマホというポータルに統一されるのも有りかもしれません。


 さて、最近の話題からさまざまな"際"を見てきましたが、"際"の部分で大きな変革を起こしてきたのが鉄道の乗車券かもしれません。先述のみどりの窓口は、特急券や座席指定券が絡みますが、通常の乗車券(きっぷ)は、窓口での購入⇒券売機での購入⇒接触式プリペイドカード(イオカードやオレンジカード)⇒非接触式乗車券⇒スマホ搭載型非接触式乗車券⇒クレジットカード といった進化で、いつの間にか乗車券(きっぷ)自体が無くなっています。つまり、従来は乗車券(切符)が"際"の象徴で、この乗車券(きっぷ)をどのように購入するか、という変化であったものが、乗車券(きっぷ)が見えなくなり"際"は乗車券ではなく「運賃の支払い」という鉄道サービスを利用するための本質に変わってきています。これにより乗車券(きっぷ)が存在することによるさまざまな制約から解放され、新しい価値が創出できる環境が出来上がっています。
 特にサイバーとリアルの"際"では、リアルの置き換えから新たな"際"の創造が、結局は物事を単純化するための近道となるのかもしれません。"際"が変わらなければ人は"変化"の意識からは抜け出せず、変化を嫌ったまま時間が過ぎてしまいます。 "際"を変えることで利用者に利用することの意識や責任も実感させる仕組みと仕掛けが大切になる気がします。

 "際"をデザインするプロフェッショナル、これから求められる重要な人財となるかもしれません。

執筆者プロフィール

執筆者 永倉正洋氏

永倉 正洋 氏

技術士(電気・電子部門)
永倉正洋 技術士事務所 代表
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事
Mail:masahiro.nagakura@naga-pe.com

 

1980年 日立製作所入社。 システム事業部(当時)で電力情報、通信監視、鉄道、地域活性化などのシステムエンジニアリングに取り組む。
2003年 情報・通信グループ アウトソーシング事業部情報ユーティリティセンタ(当時)センタ長として、情報ユーティリティ型ビジネスモデル立案などを推進。
2004年 uVALUE推進室(当時)室長として、情報・通信グループ事業コンセプトuVALUEを推進。
2006年 uVALUE・コミュニケーション本部(当時)本部長としてuVALUEの推進と広報/宣伝などを軸とした統合コミュニケーション戦略の立案と推進に従事。
2009年 日立インフォメーションアカデミー(当時)に移り、主幹兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。
2010年 企画本部長兼研究開発センタ長として、人財育成事業運営の企画に従事。
2011年 主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施に従事。
2020年 日立アカデミーを退社。
永倉正洋技術士事務所を設立し、情報通信技術に関する支援・伝承などに取り組む。日立アカデミーの研修講師などを通じて、特に意識醸成、意識改革、行動変容などの人財育成に関する立体的施策の立案と実践に力点を置いて推進中。

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