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株式会社 日立アカデミー

第6回 IT活用の変化は"ITフィールドの顧客志向"を変える

-フットマッサージを受けながら考えたこと-

2014年6月27日'ひと'とITのコラム

夏に向けて暑い日が多くなり、体が疲れやすくなるこの時季。ご自身に合ったリラックス方法があると、心も体もグンと軽くなりますよね。さて、今回は永倉がフットマッサージを受けながら考えた'顧客志向'についてです。一見ITとは無関係に思える"潜在的な懲りをみつけてほぐす"こと・・・。実は、ここにITにおける顧客志向を考える上での大きなヒントが隠されていたのです。

私は仕事柄よくフットマッサージに行きます。フットマッサージの顧客志向の構造は、どうなっているのでしょうか。 まずマッサージをするための基本的な技術や知識の習得が必須です。マッサージ技法や足裏の反射区の知識などがこれにあたります。また、コミュニケーションに関するスキルの習得も必要でしょう。次に施術のスキル・・・習得した技術をもとに、固くなっている部分や浮腫んでいる部分などを"探る"ことで悪いところを見つけてほぐす、これでマッサージの「最小基本」は成立します。しかし、反射区の知識を使うことで原因の深掘りを行い、顧客自身が気づいていない原因の「可能性」を見つけます。さらに何気ない会話から得た「立ち仕事が多い」、「パソコンを使うことが多い」など顧客の仕事の特徴やライフスタイルなどを加味しながら予防策の提示や質的なほぐし方の考慮など試行錯誤を繰り返します。これにより顧客にとって最良な施術を見つけて顧客の表層的なニーズに応えるだけでなく、本質的な解決に近づくことになります。フットマッサージの満足感は、"技術のうまさ"という軸だけでなく"自分に合っているか否か"が結局重要です。この「自分に合った」という価値が継続意向につながります。〔技術・知識の習得→その実行→表層的課題の抽出→必要情報の収集→顧客環境の推測→潜在的課題の抽出→試行錯誤によるベストソリューションの組み立て〕という施術者のプロセスが、顧客個々の「楽になりたい」という"原則的な課題/期待"を共有しながらなされるからこそ「顧客に合う」というレベルに到達するのでしょう。

この"原則的な課題/期待の共有"という要素に、IT人財にとっての顧客志向を考える上で、大きなヒントがある気がします。

顧客志向という観点から顧客やユーザの「満足」という指標をアンケートなどで把握して事業推進のPDCAをまわす、という施策は多くの企業や部門で実施されてきています。このアンケート、「満足」という指標だけでは対象としている商品や事業の提供に対する「結果指標」に過ぎません。「継続意向(リピータ)」や「取引拡大」につながる指標は顧客やユーザの「期待」であり、「期待」の把握とその「期待に対する満足」の組み合わせで見なければなりません。ITフィールドでも同様でした。

フットマッサージイメージ

しかし、本コラムでも書いてきたように、ITはビジネス/業務のプロセスに置き換わり、ビジネスでのイノベーションにも大きく関わってきています。このような『見えない技術』(第2回コラム)をベースとするソリューションビジネスでは、従来の商品の提供を主体とするプロセスの顧客志向の考え方(指標)を踏襲しても的確な気づきを得られなくなってきている気がします。現在、顧客志向観点で最も有効なのは「顧客やユーザが気づいていない潜在的課題/期待を見つけて応えること」と言われています。しかし、IT活用がプロセスそのものになっている時代、IT人財はビジネス/業務プロセス開発の一翼を担いながらソリューションの提供(「解答」ではなく「解決」の提供)が求められています。しかし、顕在/潜在に関わらず課題や期待を"知る"ということは結局「解答の提供活動」を前提としています。いま、IT人財に求められている「解決活動」は、「表層的な課題や期待がなくても現状より良いもの」といったイノベーティブな解決という領域にまで拡がってきています。IT人財が「解決活動」を的確に実行するには、ビジネス/業務プロセスを提供しているという観点での「顧客やユーザの原則的な課題を理解し共有しているか」が必須です。顧客やユーザに「自分/自社に合うIT人財」として信頼してもらうための試行錯誤には、従来の期待や満足というレベルの指標だけでは足りないということです。『ビジネス構造にIT人財が組み込まれている時代』(第4回コラム)、ビジネスのプロであるユーザや顧客と原則的課題を共有しながら、ユーザや顧客とは異なる視点やスキルの協働で「解決」していく・・・。

IT活用の進展とともに、IT活用フィールドは他の商品等のビジネスフィールドとは異次元の様相を呈してきており、顧客アンケートなどの指標も先例がない「未知の解」を求める状態となってきているなぁ~とフットマッサージを受けながら考えていました・・・。

執筆者プロフィール

永倉 正洋

技術士(電気・電子部門)
株式会社 日立アカデミー
主幹コーディネータ
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事

日立製作所でシステムエンジニアリングの経験を経て、2009年に日立インフォメーションアカデミー(現:日立アカデミー)に移る。企画本部長兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。2011年以降、主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施を担当している。

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