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Hitachi
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株式会社 日立アカデミー

2026

♯06

Academy Letters

One Hitachiを加速する。
地域ハブによる
学びのスケールアップ

Ashutosh Anshu 氏
日立インド(HIL)CHRO

Yinn Ewe 氏
日立アジア(HAS)CHRO

川村 肇
日立アカデミー
取締役社長

7月、日立アカデミーは、日立アジア(HAS)および日立インド(HIL)に、グローバルな学びの拠点となる「Collaboration Office」を立ち上げました。
この新たな一歩を機に、日立アカデミー社長と、HAS・HILのCHROが対話。地域から広がるこの取り組みが、学びの在り方をどう変え、リーダーシップ、さらには事業の実行力にどのような変革をもたらすのかを語ります。

なぜ今か。高まるニーズに地域から応える

川 村まずは、Collaboration Office設立の背景からお話しさせてください。現在、日立におけるグローバル・コーポレート・ユニバーシティの構想について、大きな方向性を議論しているところです。ただ、その全体設計には一定の時間を要します。一方で、各地域の事業体からは、人財育成に対する切実なニーズが寄せられています。限られた枠の中で年次的に提供されるグローバルプログラムを待つのではなく、それぞれの地域に根ざしたかたちで、より充実した学びと育成の機会を求める声が高まっているのです。

だからこそ今年7月、まずインドおよびアジア太平洋地域を皮切りに、各地域に根ざした日立アカデミーのCollaboration Officeを立ち上げます。これは目の前の事業ニーズに応えるだけでなく、自律分散型のグローバル経営モデルを掲げる中期経営計画「Inspire 2027」の方向性にも直結する取り組みです。さらに、現在の地政学的な環境を踏まえれば、地域に根ざした学びの拠点を持つことは、真の「One Hitachi」を各地域で実現していく上でも不可欠であると考えています。
Yinn川村さんは重要なポイントを指摘してくれました。自律分散型の経営モデルにシフトするためには、これまでとは異なる、より高度なリーダーシップが要求されます。私たちの「真のOne Hitachi」という野心的な目標を実現するには、企業レベルで考え行動するリーダーを積極的に育成する必要があります。

従業員からの期待について言えば、彼らは市場環境の大きな変化の中にいます。スキルの通用期間はいま、急速に短くなっています。継続的な学びは、もはや「あればよいもの」ではなく、戦略的な必須要件であり、競争優位そのものになっているのです。

そのような状況下で、L&Dはいまや事業戦略の中核へと移行しつつあります。私はその進化を「ACE」という枠組みで捉えています。すなわち、スキルベースの人財経済を加速させるAmplifier(増幅装置)であり、グループ会社をOne Hitachiのもとに結びつけるConnector(結節点)であり、リーダーの力を引き出すEnabler(実現基盤)です。
今日のリーダーには、感情知性、ビジネス感覚、AIリテラシー、そして変革を牽引する力など、多岐にわたる能力が求められています。こうした複雑な環境下でリーダーが力を発揮するために、L&Dは極めて重要な役割を担っているのです。
Ashutoshまさにその通りだと思います。グローバルとしての基準を維持しながら、各地域の要件に対応していくことは極めて重要です。日立アカデミーは社内でも高く信頼されているブランドであり、インドのチームも今回の立ち上げに大きな期待と高い意欲を持っています。

インドの従業員は、スキル向上への意欲が非常に高いのが特徴です。これまでも、GAP-Mのようなグローバルプログラムの募集を開始すると、常に想定を上回る応募が寄せられてきました。そうした育成ニーズに、今後は地域で応えていけるという点は、大きな前進だと感じています。
実際、インドにおける人員規模は急速に拡大しており、現在では4万人を超え、さらに増加を続けています。これほどの規模の組織における自己成長への強い意欲に応えていくことは、私たちにとって極めて大きな責任です。グローバルプログラムだけで全てをカバーすることは現実的に難しい中、こうした地域のCollaboration Officeは、今後極めて重要な役割を担っていくことになります。

HASでのCollaboration Office立ち上げイベントの様子(1)
(6月24日実施)

川 村その規模を聞くと、正直プレッシャーも感じますが、まさに必要なプレッシャーだと思います。今回の取り組みで、日立インドや日立アジアといった地域の統括組織と密に連携していくべき理由はシンプルです。自律分散型の経営を機能させるためには、事業戦略と人財育成が切り離せない関係として結びついている必要があるからです。
Ashutoshさん、インドの視点から見て、この取り組みは日々の意識や行動にどのような変化をもたらすとお考えですか。
Ashutoshマインドセットそのものが大きく変わると感じています。従業員やリーダーが、自分たちの地域に日立アカデミーの拠点が存在するのを目にすることで、グローバル水準の人財育成を"この場所で実現できる"と実感できるようになります。
ガンディーの言葉に、こんな一節があります。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ。」まさに、私たちがめざす学びの在り方を象徴している言葉だと思います。
この意欲の高さを象徴する好例も、最近見られました。日立アカデミーが自己応募型のグローバルプログラムを立ち上げた際、インドからの参加は驚くほど高い水準に達しました。これにより、成長の機会はもはや地理的な制約に縛られるものではないということを、従業員自身が実感することになりました。
さらに、日立アカデミーが構想する「Train the Trainer(TTT)」プログラムは、社内における知の共有を一層促進していきます。教えることに情熱を持つ人財が、その力を発揮し、新たな役割に挑戦できる場を広げていくことにつながるでしょう。
川 村各地域のHQにおいても、これまで地域に根ざした研修が充実した形で提供されてきました。一方で、従業員の視点に立ったとき、従来の地域研修と日立アカデミーのプログラムとでは、どのような違いがあると考えますか。
Ashutosh本質は、グローバルブランドの力と、標準化された品質にあると思います。これまで各地域で提供してきたプログラムも非常に高い成果を上げてきましたが、従業員は自然とグローバル水準を志向するものです。
「Hitachi Academy」という名称には、グローバルなナレッジの蓄積としての重みがあります。そのブランドと、各地域の特性を融合させることで、受講者の期待と意欲は大きく高まります。結果として、従来の必要な企業研修の一環という位置づけから、質の高い、価値ある育成機会へと認識が変わっていくのです。
川 村その認識は、まさしく日立アカデミーのビジョン「人がつながり、学びが触発されるワールドクラスの知の拠点となる」と重なります。これらの拠点を各地域に構築していくことは、このビジョンを着実に実現していくための、確かな一歩だと考えています。
Ashutoshそのとおりです。私たちの人財戦略全体における最終的な目標は、日立を"選ばれる企業"にしていくことにあります。学ぶための資質は才能ですし、学ぶための技術はスキルですが、学ぶ意欲は本人の選択によります。こうしたCollaboration Officeの取り組みを通じて、私たちは従業員にその「選択」の機会を力強く提供していきたいと考えています。

One Hitachiを加速する。地域ハブによる学びのスケールアップ

人財を解き放つ。TTTをスケールさせる挑戦

川 村このように深い洞察が得られると、今回のような地域を超えた対話の価値がいかに大きいかが実感できますね。ここで、TTTについてさらに深掘りしていきましょう。実は、今年4月に日立アジアで開催した「Learning Connect」で、非常に印象的な出来事がありました。私のスピーチの直後、一人の女性社員がすぐに手を挙げ、自らトレーナーとして貢献したいと申し出てくれたのです。その訪問前には、アジア太平洋地域ではトレーナーに自ら手を挙げる文化はそれほど強くない、と聞いていました。それだけに、あれほど高い意欲をもって一歩を踏み出す姿は、私にとって忘れがたい瞬間となりました。
Yinn私も、あの瞬間を鮮明に記憶しています。誤解を避けるために説明しますと、アジア太平洋地域でL&Dプログラムに手を挙げる人が少ない背景には、意欲の不足があるわけではありません。むしろ、組織内における複数のプロセスが影響しています。通常、こうした取り組みは、日立アカデミーから各地域の人事、さらにGMやラインマネージャーへと展開されていきます。その過程で、「誰に余力があるのか」「誰が参加できるのか」といった判断に、無意識のバイアスが入り込むことがあります。その結果、現場の個々のメンバーに対して直接機会が届くことは、必ずしも多くないのが現状です。

それだけに、「Learning Connect」という場がそうしたフィルターを越えて機能したのは、大きな意味があったと捉えています。彼女はその場で川村さんのスピーチを聞き、触発されその場で手を挙げました。この出来事は、従業員一人ひとりが自ら手を挙げることのできる、よりオープンで直接的な場が必要であることを示しています。日立の中には、まだ十分に顕在化していない人財の力が数多く存在しています。それらを引き出していくための仕組みを、私たちはさらに強化していく必要があります。
AshutoshYinnさん、あなたの意見に100%賛成です。私の経験では、実際、トレーナーとして貢献したいという強い意欲を持つ人財がいても、上司が日常業務から自分の部下を解放したがらないというケースがよく見られます。だからこそ、地域に日立アカデミーのCollaboration Officeを設けることで、アカデミーと個々の従業員との距離が大きく縮まり、これまで存在していた組織的なハードルを大幅に低減することができます。

HASでのCollaboration Office立ち上げイベントの様子(2)
(6月24日実施)

地域の知見をつなぎ、グローバルと接続する

川 村こうした構造的な距離を解消していくことは、私たちにとって重要な目的の一つであり、次のトピックにもつながります。これらのCollaboration Officeが、各地域の市場ニーズを的確に捉え、それをどのように実効性のある学びへと落とし込んでいくのか、いうことです。グローバルとしての整合性と、各地域の文脈とのバランスをどのように実現していくべきか、お二人はどのようにお考えでしょうか。
Yinn育成プログラムが実際に運用される場が市場に近いということは、私たちにとって大きな強みになります。たとえば「意見をはっきり言う」というコンピテンシーを例に挙げましょう。グローバルな議論では、この能力に重点を置くことを疑問視し、まずは傾聴を重視すべきではないかと主張する人もいるでしょう。しかし、アジアの企業の文脈では、「意見をはっきり言う」文化の醸成は、いまだに非常に重要な育成ニーズです。

これは、単に文化的な問題ではありません。「意見をはっきり言う」力を強化することによって、意思決定の質は向上し、リスクはより早期に顕在化し、結果として実行スピードも加速します。こうした能力を育むためには、双方からの働きかけが不可欠です。リーダーは心理的安全性と信頼関係を意図的に構築していく必要があり、一方で個々人も、自らの意見を述べる自信とそのためのスキルを備える必要があります。

こうした地域ごとの繊細な優先事項を的確に捉え、それを日立アカデミーとの対話の中に組み込んでいける点こそ、各地にCollaboration Officeを設ける大きな意義です。カリキュラムそのものは日立のグローバルな枠組みと整合させながらも、提供方法や重点の置き方については、それぞれの市場で本当に重要なポイントに合わせて柔軟に調整していくことができます。コンテンツは、文脈があってこそ価値を持つのです。

日立がInspire 2027に掲げる野心的な目標達成に向け前進する中で、現地から得られるこうした洞察や能力は、日立グループ全体の協働、イノベーション、そして実行力を一層強化していく上で、不可欠な基盤となります。
川 村まさにその通りですね。地域ごとに異なる文化から学び合うことが、私たちのグローバルプログラムをより一層豊かなものにしていくはずです。
Ashutosh私たちとしても、すでにインド全土にわたる日立グループ各社のニーズを積極的に把握し、整理を進めています。ただし常に意識すべきは、日立全体としての共通の方向性にしっかりと軸足を置くことです。すなわち、企業として私たちが人財にどのような行動や成長を期待するのかという視点です。
その上で、日立アカデミーが有する分析基盤やツールを直接活用できるようになることで、地域における研修ニーズの把握は、より精緻で焦点の定まったものへと進化していきます。
川 村現時点では、各地域ともスリムな体制での立ち上げとなっていますが、Collaboration Officeと東京のコアチームとの間で継続的なフィードバックループを確立することで、地域ごとのニーズを迅速かつ的確に捉えていくことが可能になります。
Ashutoshこの連携ネットワークのもうひとつのメリットは、地域を越えたシナジーの創出です。実際には、異なる地域が同じような研修課題に、それぞれ個別に取り組んでいるケースも少なくありません。
これを日立アカデミーのもとで一元的にデータとして集約することで、ある地域で設計されたプログラムを、時差などの条件を踏まえながら、他地域の従業員にも柔軟に開放していくことが可能になります。

One Hitachiを加速する。地域ハブによる学びのスケールアップ

戦略から実行へ。学びで加速するInspire 2027

川 村グローバル・コーポレート・ユニバーシティのロードマップを考えるうえで、私たちのコアカリキュラムは大きく3つの柱で構成されています。第一に、日立の企業文化をグローバルに浸透させていくこと。第二に、グローバルおよび各地域において次世代リーダーを育成すること。そして第三に、Inspire 2027の実行を直接的に支えていくことです。

まずは立ち上げとして、リーダーシップの基盤とビジネスに不可欠なスキルを網羅した、自己応募型プログラムを展開します。さらに今後1年を目途に、このCollaboration Officeのモデルを欧州、米州、中国へと展開し、グローバルで連動するL&D体制の確立をめざしていきます。
Ashutosh第一の柱である「企業文化」にしっかりと焦点を当てることは、極めて重要だと考えています。日立は100年以上にわたり成功を重ねてきた日本企業であり、その根底にある価値観や歴史をグローバルの従業員と共有することは不可欠です。
さらに、日立はM&Aを通じて事業を急速に拡大していることから、新たに加わる人財をいかに迅速に企業文化へと迎え入れるかが重要になります。そうすることで、彼らが早い段階から日立の一員として自然に組織に溶け込むことができます。この文化的な基盤が確固たるものとなって初めて、リーダーシップの育成や事業戦略の実行も、着実に前進していくのです。
Yinn文化、リーダーシップ、Inspire 2027の実施という3つの柱の整理は、とても明快で素晴らしいと思います。個人的な経験からも、リーダーシッププログラムは人生を変えるほどのインパクトを持つものだと実感しています。とりわけGAP-Kは、「目的を持ってリードする」とは何かを改めて問い直す機会となり、今のマネジメントの在り方にも大きな影響を与え続けています。

第三の柱、Inspire 2027について、ひとつ私から具体的な要望を挙げるとしたら、日立のコアとなる概念をより分かりやすく解きほぐし、誰もが理解しやすい形にしていくことに注力していただきたいという点です。タウンホールなどの場では、「Lumada」や「HMAX」といったキーワードが頻繁に共有されますが、必ずしもすべての従業員にとって直感的に理解しやすいものではありません。こうしたハイレベルのコンセプトを実践的で理解しやすい言葉に翻訳し、すべての従業員が自らの日常業務と会社の目標とを結びつけて捉えられるようになるために、L&Dは非常に重要な役割を果たすことができるはずです。

従業員一人ひとりが、Lumadaのフレームワークと、顧客との協創による価値創出というその本質をしっかりと理解することこそが、戦略目標の達成につながります。
その実現に向けて、L&Dは重要な推進役となります。エンジニアや営業などの現場が、Lumadaエコシステムをさらに広げていくために必要な力を育み、戦略を実行へとつなげていく役割を担うのです。
Ashutoshまさにその点に共感します。Inspire 2027に関するこうした個別の概念を分かりやすく分解した、目的に応じたeラーニングを展開できれば、従業員全体の理解と方向性をしっかりと揃えていくことができるはずです。

HILでのCollaboration Office立ち上げイベントでのパネルディスカッションの様子
(7月8日実施)

川 村結局のところ、Lumadaを最も効果的に伝える方法は、各地域で生まれた実践的な成功事例を捉え、それを教育用のケーススタディとして共有していくことです。そのためには、各地域のCollaboration Officeが、現地の事業開発チームと緊密に連携し、一体となって取り組んでいく必要があります。
Yinn さらに言えば、TTTモデルは、組織としてのナレッジを持続的に保持するうえで重要な役割を果たします。外部のコンサルタントだけに頼っていると、その知見の多くは契約終了とともに失われてしまいます。しかし、社内のリーダーが研修トレーナーを担うことで、参加者から共有される多様なアイデアや業界横断的な課題を自ら吸収することができます。そして次の機会で、それらの知見を結びつけ、異なるBUの人財同士をつなぐことが可能になります。こうすることで、外部ベンダーへのコストを削減するだけでなく、組織内に豊かなナレッジネットワークが形成されるのです。
Ashutosh加えて、人々のつながりがもたらす効果を過小評価してはなりません。インドでGAP-Mプログラムを実施するため、多様なグループ会社の従業員たちが一堂に会すと、参加者同士が自発的に有機的なパートナーシップを築き、お互いのビジネス課題について支え合う姿を目にします。またインドでは、社内研修トレーナーが一貫して非常に高い評価を得ています。なぜなら、彼らは日立の精神を深く理解しているからです。彼らはリーダーの言葉を共有し、組織特有の課題を的確に捉えたうえで、学びを自分たちのために完璧にカスタマイズしてくれる存在なのです。
川 村中長期的には、トレーナーは自地域にとどまらず、各地域で育成された経験豊富な人財が他地域へと展開し支援していく姿を見据えています。そのためにも、まずは基盤となる必須要素を確実に整え、運営を安定化させたうえで、段階的にスケールしていく考えです。
Yinnこのトレーナーネットワークの活性化と品質担保の観点から、公式のデジタルバッジや認定制度の導入が有効です。たとえば「Hitachi Academy Certified Trainer」といった公式資格を設けることで、個々のモチベーションと誇りを高めるとともに、社内におけるブランド価値の向上にもつながります。こうした仕組みにより、L&Dの取り組みがグローバルにどのような成果を生み出しているのかを可視化し、定量的に把握することも可能になります。
川 村それは素晴らしいアイデアですね! Collaboration Officeの構築と地域リーダーたちのエンパワーメントは、非常に意義深く刺激的な挑戦になるはずです。これから直面する課題も、私たちをさらに強くしてくれるものとなるでしょう。そして、グローバルビジネスを支えるための取り組みを、さらに一層強化していけることを楽しみにしています。

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