ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

株式会社 日立アカデミー

2024

♯01

Academy Letters

グローバル企業として
日立がめざす人財育成

川村 肇
株式会社日立アカデミー 取締役社長

Achim Braun 氏
日立エナジー株式会社 CHRO

日立エナジーのCHRO 、Achim Braun氏(以下Achim)をお迎えして、株式会社日立アカデミー取締役社長 川村肇(以下川村)と、グローバル企業として進化していく日立をキーワードに人財育成について対談しました。
川 村 Achimさん、本日は対談の機会をいただき、ありがとうございます。日立が2027年の中期経営計画を策定している今、日立アカデミーは、グローバル企業である日立の研修・人財育成を担うCenter of Excellence (CoE) (※1)としての私たちの将来を考えています。これまで国内の人財に主な焦点を当ててきた私たちにとって、今回の転換は大きいものです。こうした意味で、日立エナジーのAchimさんから学び議論すべきことは非常に多いのです。早速ですが日立エナジーでは、グローバル人財の育成にどのように取り組んでいるのでしょうか?

※1 Center of Excellence(CoE):組織横断的な取り組みを進めるため、人財やノウハウを1つの拠点に集約したもの
Achim 日立と日立エナジーとの統合は、いかに日立エナジーがグローバル企業として人財育成を一から立ち上げるかについて考える、本当に良いきっかけとなりました。私たちが取ったアプローチの一つは、「Power+(パワープラス)」と銘打った研修生の人財プールの開始です。毎年60名、2024年度には80名のSTEM人財(※2)を雇用し、会社のあらゆる側面について1年半教育するのです。このプログラムには、二つの主要なベネフィットがあります。一つは新卒人財を雇用し会社について学ばせられること、もう一つは最終的には日立についての知識が豊富で献身的なベテランのエンジニアリング人財の供給につながるということです。

※2 科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の教育を受けた人財
川 村 毎年60-80名となると、全体の雇用人数のごく一部ですよね?年間の雇用規模は数千人ですか?
Achim ええ、通常、年間合計8000名を雇用しています。しかし、このような形で雇用するSTEM人財は、将来のリーダー人財でもあると捉えています。私にとってリーダー育成におけるカギは、いま雇用しているリーダー人財ではなく、人財を常に供給できる人財パイプラインの構築と充足です。これは、日立がグローバル企業として取り組むべき課題だと思います。日立のサイズを踏まえれば、地域的なアプローチの検討が有効でしょう。例えば、将来的に地域拠点ごとにさまざまな人財プールを運営し、こうしたプールで育成した人財をさまざまな事業に振り分けるのです。
川 村 それは興味深いアイディアですね。私からの次の質問とも関係しているのですが、ご存知の通り、日本企業は主に新卒人財を雇用する傾向にあります。しかし海外では、人事が注目するのは経験のある人財です。この違いについて、どのようにお考えでしょうか?
Achim ヨーロッパやアメリカでも、常に新卒は雇用してきました。実際、私自身のキャリアは大きなドイツのグループでの研修生としてスタートしました。そして、おっしゃる通り、現在日立エナジーでは、会社内部の組織体制を構築し、それを軌道に乗せようとしているところですので、経験ある人財の雇用に注目しています。ただ、私は重要なのはバランスだと考えています。

企業の人財には二つの潮流が必要です。一つは理想的には新卒で雇用され社内で育った人財、そしてもう一つは企業に新しいエネルギーをもたらし組織の前向きな変化の触媒となってくれる社外からの人財です。企業を正しい方向に導き続けるためには、この二つを持つことが重要です。

また、ビジネスニーズに見合った社内の人財育成や人財プールの整備についても考える必要があります。たとえば、一般管理職向けの人財を育成する一般研修生プールと、財務や人事、その他の専門分野向けの機能別研修生プールを別途設けることが効果的かもしれません。

グローバル企業として日立がめざす人財育成

川 村 確かにそうですね。私たちは将来の経営リーダーの育成についてよく話をしますが、時代の変化の速度の速さを考慮すると、技術リーダーやイノベーションリーダーは、どのように育成すべきだとお考えですか?
Achim 最新技術の専門家を常に社内で十分確保できるよう、時代に素早く対応しなければなりません。企業としては、将来の課題に協力して対処できるよう、好奇心やチームワークなどの対人スキルを備えた人財を確保する必要があります。
川 村 経営リーダーと技術リーダーの育成には、それほど違いはないとおっしゃっているように聞こえます。
Achim ええ、そうです。どの分野であろうと、リーダーシップはリーダーシップです。技術リーダーであれ、ビジネスリーダーであれ、求められる資質は同じです。リーダーの仕事は、正しいプレイヤーを正しい席に付かせてマシンを稼働させること。リーダーに理解してほしいことは、すべてを知るリーダーは存在しないということです。リーダーの役割は、専門家のネットワークを管理することなのです。例えば、私自身がAIのエキスパートであったことはありませんが、リーダーとしては、企業が正しい方向をめざすことができるよう、AIの課題に対応できるスキルを持ったチームを構築することが求められるわけです。
川 村 同感です、重要ですね。しかし、特に研究開発などの技術畑の人たちは、リーダーシップ的役割より自分たちの仕事にフォーカスしがちです。日立エナジーでも、このようなことはありますか?
Achim もちろんですよ。研究開発の人たちは技術を重視しがちです。でも、その中からも素晴らしいリーダーシップ人財を見つけることができると私は信じています。

組織間協力の促進

川 村 次の話題は、日立と日立エナジーの将来の協力関係です。二つの組織の協力を進めるカギは何だとお考えですか?
Achim 組織間協力は、一つのスキルです。協力の成功には、このスキルを持った人財、そして少々の時間と努力が必要です。私は成功を確信していますが、そのためにはヒエラルキー的思考から離れる必要があるでしょう。それまでの帰属先が日立エナジーであれ、日立製作所であれ、日立レールであれ、私たちは全員日立に属しているのです。また、もう一つ私たちが理解していなければいけないことは、日立エナジーには25年以上ABBに勤めて来た人が大勢いること、そして彼らにとって変化を受け入れるのは容易ではないということです。リーダー育成の重要な点として、対面での合同トレーニングが効果的だということも挙げられます。なぜなら、個人のレベルで同じグルーブの別組織の人々とコネクションができるからです。家族や友人関係のように個人的な関係を構築できると、通常とは異なるやり方で物事を進めることができ、自動的に協力関係は改善されるわけです。
川 村 日立と日立エナジーの間の人員交流は、組織を超えたつながりを作るのに良い方法になりうるのですね。
Achim そうです。そして、それをもう少し進めるなら、特にグローバルな役職の場合、少なくとも2か国、理想的には別の大陸に住み働いたことがあるという経験を、リーダー候補者の必須条件にすることを検討すべきだと思います。なぜなら異文化交流は、経験が無いとなかなか難しいからです。私たちは皆、自分自身の文化にとらわれています。別の文化の中で暮らしてみれば、それがどういうことか理解できるようになりますし、国際チームへの対応力を養うことができます。

グローバル企業として日立がめざす人財育成

企業にとっての「グローバル」を定義する

川 村 人事部門は何をすれば協力関係を促進できると思いますか?
Achim 正直、人事部門だけでは何もできません。グローバル企業になるためには、企業全体での議論が必要です。「グローバル文化」といっても、組織によって意味合いが異なりますから、日立にとってグローバル文化とは何を意味するかを決定する必要があるのです。たとえば日立エナジーでは、この問題に対処するため、独自の「Our Leadership Pillars(私たちのリーダーシップモデル)」を作りました。10か国でワークショップを行い、参加者から良いリーダーの資質を聞き取り、その意見をもとにモデルを作ったのです。自分たち自身の意見でできたモデルですから、「私たちの」リーダーシップモデルなのです。このプロセスにより、社員自身が考える自分たちのあるべき姿に従って自分たちの文化をデザインすることができました。自分がどのようになりたいのか。これこそが、私たちが自らに問いかけるべき根本的な質問だと思います。
川 村 日立に所属する全員にとって「グローバル」とは何を意味するかについて、共通認識が必要ですね。
Achim そのとおりです。また、グローバルな場で働く方法を皆が学ぶことができるよう、すべてのオフィスでさまざまな文化を可視化する必要があります。自分の文化的文脈では居心地が悪いと思われることも、それ自体が「間違っている」わけではないということを、すべての人が理解しなければならないと思います。文化間の差異を寛容に扱うためのツールボックスを持っておく必要があるのです。それは別の文化を完全に理解せよ、ということではありません。「違っていることは悪いことではない」ということを、社員に理解させることが重要です。

将来を見据えて

川 村 研修・人財育成機関として、私たち日立アカデミーに期待されることは何でしょうか?
Achim ビジネスニーズに耳を傾け、共通の未来に向けた研修を行うということでしょうか。同じプールの中にあまりにも大勢の人々を入れてしまうのではなく、もう少し細かくプールを設定し、さまざまなレイヤーに焦点を当てるのです。もうひとつ検討すべき課題は、皆が簡単にコミュニケーションに参加できるよう、ある程度の英語の使用を社内に導入するということです。これはトップ主導で始めるべきだと思います。日立のコーポレート言語は英語である、あるいは日本語と英語である、と宣言するのです。その場にひとりでも日本語を話せない人、日本語が母国語ではない人が居たら、言語を英語に切り替える。すべてのプレゼン資料は英語で準備する。これを可能にするためには、言語トレーニングを行う必要もあります。
川 村 同感です。協力関係と文化交流がカギであり、それを行うためには、まず個人的な関係と相互信頼の構築が必要です。そしてそのためには、ある程度の英語力はマストですね。コミュニケーションの取り方にも文化があり、会議の始め方一つとっても異なりますが、その土台にお互いの尊重(Respect)と信頼(Trust)が必要です。言葉のみならず文化理解をひっくるめてグローバルに対応できる人財を育成していくことで、グローバル企業としての日立が加速していくと思います。

お問い合わせ

ニュースリリースへのお問い合わせ、新聞・雑誌・メディアなどからの取材のお申し込みは、下記よりお気軽にお問い合わせください。

Facebook公式ページ Linkdin公式ページ YouTube公式チャンネル