川 村
確かにそうですね。私たちは将来の経営リーダーの育成についてよく話をしますが、時代の変化の速度の速さを考慮すると、技術リーダーやイノベーションリーダーは、どのように育成すべきだとお考えですか?
Achim
最新技術の専門家を常に社内で十分確保できるよう、時代に素早く対応しなければなりません。企業としては、将来の課題に協力して対処できるよう、好奇心やチームワークなどの対人スキルを備えた人財を確保する必要があります。
川 村
経営リーダーと技術リーダーの育成には、それほど違いはないとおっしゃっているように聞こえます。
Achim
ええ、そうです。どの分野であろうと、リーダーシップはリーダーシップです。技術リーダーであれ、ビジネスリーダーであれ、求められる資質は同じです。リーダーの仕事は、正しいプレイヤーを正しい席に付かせてマシンを稼働させること。リーダーに理解してほしいことは、すべてを知るリーダーは存在しないということです。リーダーの役割は、専門家のネットワークを管理することなのです。例えば、私自身がAIのエキスパートであったことはありませんが、リーダーとしては、企業が正しい方向をめざすことができるよう、AIの課題に対応できるスキルを持ったチームを構築することが求められるわけです。
川 村
同感です、重要ですね。しかし、特に研究開発などの技術畑の人たちは、リーダーシップ的役割より自分たちの仕事にフォーカスしがちです。日立エナジーでも、このようなことはありますか?
Achim
もちろんですよ。研究開発の人たちは技術を重視しがちです。でも、その中からも素晴らしいリーダーシップ人財を見つけることができると私は信じています。
組織間協力の促進
川 村
次の話題は、日立と日立エナジーの将来の協力関係です。二つの組織の協力を進めるカギは何だとお考えですか?
Achim
組織間協力は、一つのスキルです。協力の成功には、このスキルを持った人財、そして少々の時間と努力が必要です。私は成功を確信していますが、そのためにはヒエラルキー的思考から離れる必要があるでしょう。それまでの帰属先が日立エナジーであれ、日立製作所であれ、日立レールであれ、私たちは全員日立に属しているのです。また、もう一つ私たちが理解していなければいけないことは、日立エナジーには25年以上ABBに勤めて来た人が大勢いること、そして彼らにとって変化を受け入れるのは容易ではないということです。リーダー育成の重要な点として、対面での合同トレーニングが効果的だということも挙げられます。なぜなら、個人のレベルで同じグルーブの別組織の人々とコネクションができるからです。家族や友人関係のように個人的な関係を構築できると、通常とは異なるやり方で物事を進めることができ、自動的に協力関係は改善されるわけです。
川 村
日立と日立エナジーの間の人員交流は、組織を超えたつながりを作るのに良い方法になりうるのですね。
Achim
そうです。そして、それをもう少し進めるなら、特にグローバルな役職の場合、少なくとも2か国、理想的には別の大陸に住み働いたことがあるという経験を、リーダー候補者の必須条件にすることを検討すべきだと思います。なぜなら異文化交流は、経験が無いとなかなか難しいからです。私たちは皆、自分自身の文化にとらわれています。別の文化の中で暮らしてみれば、それがどういうことか理解できるようになりますし、国際チームへの対応力を養うことができます。