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株式会社 日立アカデミー

2025

♯03

Academy Letters

GX推進の鍵:多様性とリーダーシップで
切り拓く未来

アリステア・ドーマー
代表執行役 執行役副社長
社長補佐(鉄道事業、原子力事業、エネルギー事業、パワーグリッド事業担当)、
グリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長

2027中期経営計画の中核にもなっている「グリーン」。今回は、日立のグリーンエナジー&モビリティを担う、アリステア・ドーマー代表執行役 執行役副社長に、日立のGX推進と人財についてお話をお伺いしました。

地球の脱炭素化の課題に真摯に向き合う

過去10年にわたり、日立の企業ポートフォリオは劇的な変貌を遂げ、今や環境問題に取り組む独自の立ち位置を確保しています。二酸化炭素の排出が地球温暖化を進行させる原因であることは、科学的に証明されています。壊れやすい地球の生態系を維持するためには、世界の基盤を化石燃料からクリーンエネルギーへと移行しなければなりません。そのためには、化石燃料の燃焼をグリーン電力へ、そして可能であれば、重工業用途においてはグリーン水素に切り替える必要があります。この課題と取り組むため、各国政府は、クリーンエネルギーを生産する最速かつ最も安価な方法である風力や太陽光などの再生可能エネルギーにより発電容量を拡大し、また小型モジュール炉や新型のギガワット原子炉を利用した原子力発電の拡大を計画しています。石炭やガスによる火力発電所が次々と閉鎖される中、炭素回収ソリューションなどの革新技術の導入も進められています。
再生可能エネルギーや原子力によって発電能力を増加させる際の大きな課題は、ほとんどの地域において、供給が需要から遠く離れていることです。例えば、洋上風力発電所などです。また、既存の電力網は、そのような電力供給の増加を受け入れる能力が必ずしも備わっているわけではありません。日立エナジーは、このニーズへの対応に精力的に取り組み、大量の電力を長距離送電するための高圧直流送電網を供給し、また送電系統容量を拡大する技術も提供しています。再生可能エネルギーの供給を管理するためには、日立の持つデジタルの力も必要です。風力と太陽光は一定ではないため、需給のバランスを取るという複雑な課題があり、それはデジタルな手法でしか管理できません。
再生可能エネルギー源に加え、大量のクリーンエネルギーを生産できるという観点から、原子力発電に対する需要もあります。このニーズに応じるために開発中の小型モジュール炉(SMR)は、複雑度が低く、安全性が高く、コストが低いため、在来型の大規模原子力発電所より迅速な導入が可能です。日立GEニュークリア・エナジーは、この刺激的な市場の最前線に立っており、2029年にはSMRをカナダへ初納入する予定です。
在来型発電からの切り替えは、ソリューションの一部に過ぎません。電車、電気自動車、電動自転車、電動バイクなど、交通関連(モビリティ)の電動化が進み、デジタル革命と生成AIの拡大によるデータセンターにおけるクリーン電力需要がかつてなく増加し、製造業でも成長のためのクリーン電力需要が上昇しています。つまり、エネルギー、モビリティ、デジタル、インダストリーという日立の全領域で、地球の脱炭素化に向けた課題への取り組みが求められているのです。
では、これらの課題解決に貢献するため、私たち自身は何ができるのでしょう? 市場との密接な関与を考慮すると、日立が信用を維持するには、いわゆるネットゼロ企業であることがきわめて重要です。これは日立の企業戦略ですが、個人レベルにおいても、省エネは地球を救うために役立ち、しかも省コストという利点もあります。皆さんも、自分の仕事と職場を見渡し、どのように貢献できるかを考えてみてください。私たち全員が努力すれば、節約したエネルギー1 KWずつの累積で、相当の規模の貢献になります。役員、そして従業員の皆さん、一丸となってこの課題に取り組み、変化を起こす試みに参加してください。

GX推進の鍵:多様性とリーダーシップで切り拓く未来

長期的な視点に立脚したグリーン革命

企業としての日立の長期的な成功にとって、決定的に重要なことは、サステナビリティを私たちの意思決定の中心に据え、グループ全体の力を結集させて持続可能な社会を実現することです。
市場の観点からは、各国政府が課税と優遇措置を活用し、企業に脱炭素化を奨励し始めています。クリーンで環境に優しい製品やサービスを供給できる企業は、潜在的に高い競争力を獲得するのに対し、環境に優しくない製品やサービスしか供給できない企業は、炭素税の影響を受け、優遇措置を受けられません。すなわち、製品設計に関し、長期戦略を策定する思考法が必要です。短期的にコストが増加するとしても、市場を長期的に見れば、それ以外の方法では競争力が失われ、グリーンではない製品やサービスの山が残るだけです。
サステナビリティをコストとみなし、投資を遅らせている企業も確かにあります。例えば、資本コストという理由から、工場への太陽光電池の導入を躊躇した日立レール(イタリア)の例があります。興味深いことに、太陽光電池の導入後、ウクライナ戦争と天然ガス価格急上昇が発生し、その影響でヨーロッパではエネルギー価格が高騰しました。その結果、エネルギー供給手段を自社で所有し、電力系統からのエネルギー購入と比較すると多額の節約が可能となった日立レールは、競争で有利な立場を獲得できました。この例から学べることは、元手を回収するために時間がかかるように見えても、上級レベルのリーダーシップにより、早急に投資を決断する必要があるということです。
最後に、優秀な人財を日立に集め、引き留めることの重要性を過小評価してはなりません。気候危機に関する意識が高い若者世代にとって、責任ある対応を取るだけでなく気候危機の解決に尽力している企業で働いていることは、強いプラス要因となります。優秀な人財なくして、日立が成功することはできません。企業の目標と個人の関心とを一致させることは、双方にとって有利なWinWinのシナリオなのです。

GX推進の鍵:多様性とリーダーシップで切り拓く未来

GXの成功を引き寄せるための3つのポイント

ここで、GXを具体化するために必要な、3つの提案をします。
まず、日立自体の脱炭素化は、会社の信用を保持するため、また将来的な競争力を維持するために、最も重要です。このイニシアティブは経営陣が主導し、各ビジネスユニット(BU)において信頼性が高く実行可能な脱炭素化計画を着実に遂行していくことを促します。BUのリーダーが年次ボーナス計画にGX目標を組み込むことで達成を奨励します。
第二に、GXの市場は、必ずしも日立の企業構造とは一致しません。日立エナジーや日立レールなどの事業部門は大きな成功を収めていますが、OTとITを総合して更に大きな市場機会でお客さまのGX課題を解決するためには、BU間のコラボレーションも必要です。「コラボレーション」と口にするだけなら簡単ですが、容易なことではありません。例えば、グリーンエナジー&モビリティ(GEM)セクターに特有の知識は、Global LogicやVantaraのデジタル人財には理解しにくいでしょう。逆にデジタル手法や生成AIなどは、OTの専門家にとって理解しにくいものです。このような相互理解への障壁を克服するには、コロケーション(共同の場所における業務)や、時間・目的の共有が必要です。GEMセクターでは、Global Logicと日立エナジーのOTの専門家 によるコロケーションの取り組みがインドで始まりました。まだプロジェクトを開始して半年で、調整と学習の段階ですが、相互理解は進んでおり、今後半年以内には、お客さまと共に実際の課題に取り組み、良い結果を出せるものと予想しています。さらに、事業部門間での協働を加速するためには、P/L上の責任やプロジェクトの目的や期待が事業部門間で異なる中で、これらの社内障壁を克服し成果を一緒に出していくための取り組みも必要です。次の中期経営計画で進歩を達成するには、この課題を解決しなければなりません。
そして最後に、イノベーションです。トップを走る続けるためには、イノベーションへの投資を継続する必要があります。ここで言うイノベーションとは、研究開発のみを意味するのではありません。ビジネスユニット間で横断的に活動する短期的な「水平」的イノベーションチームあるいは「社内ベンチャー」、そしてもちろん、スタートアップコミュニティと協力して私たちの目標を加速させるための外部コーポレートベンチャーを含んでいます。

多様性とリーダーシップがGX推進の鍵となる

私は、従業員一人ひとりが、日立のブランドアンバサダーであると信じています。日立が、GXを実現する技術を備えた気候変動イノベーターであり、21世紀最大の問題の解決に貢献しているという認識は、社員全員にとっての誇りです。これは、日立のどの部門で働いていても、私たち全員が誇りを持って推進すべきことです。
日立の巨大なカスタマーベースに対してGXを推進するカギは、お客さまがご自身で理解している以上に、私たちがお客さまの課題を理解することです。お客さまがネットゼロの未来へ移行する手助けをするには、カスタマーインサイトと私たちの能力・知識を組み合わせることが不可欠です。そのためには、コンサルティングスキルやデジタルスキル、現地事情に関する業界知識、技術力、協調的な考え方、そしてリーダーシップが必要です。言い換えれば、多様なスキルと経験を持つ人々から成る機動性あるチームが、共通の目的と目標をめざし、共同作業を進めることが重要です。これは、事業部門内でサイロ化し、チームにおける文化的多様性の欠如と権限の分散がしばしばみられる日立にとって、大きな課題です。成功できるか否かを左右するのは、多様性とリーダーシップです。私たちの潜在能力を最大限に引き出すためには、異なるスキル、知識、経験、文化的常識の違いの理解と尊重、そして必要な権限を与えられた優れたリーダーを組織内の全レベルに配置することが求められるのです。
過去10年間、日立は飛躍的な進歩を遂げて来ました。今後も加速度的に変化を続け、更なる発展と成果の達成を続けていくでしょう。日立は、ミッションを遂行するための人財を引き寄せ、そして育成していくという独自の立ち位置を獲得していると強く信じています。 そして、私たちは、すべての人にとって素晴らしい未来を提供するために、組織を発展させ続けることができると確信しています。

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