ここまで述べてきたような課題との向き合い方や、デジタル技術による解決策の着想、着想に必要なDX の基礎知識は、IT部門やDX推進部門などスキルやデジタル技術に長けた専門部署だけに必要なものではありません。
専門部署(IT部門やDX推進部門)は、解決に対する具体策を考え、プランを立てることはできますが、暗黙知化されている現場固有の課題を見出すことはできません。課題を発見できるのは、ビジネスの現場を担う従業員です。
時代が求めるニーズは何なのか。それはデジタル技術で解決できるものなのか。そうした課題を日々の業務を通じて見つけ出し、解決のための道筋を考える。そして、その従業員が見つけてきた課題を新たな製品やサービスの開発などに結びつける。そのうえでも、現場部門と専門部署の協働が欠かせません。その際、重要になってくるのが、DXに関するリテラシー教育です。現場部門の全従業員がDXの共通理解・知識を身につけることで、両部門が効果的に連携し、企業のDX化が急速に推し進められるのです。
DXを推進するために必要な人財育成としての手段は多岐に渡ります。日立アカデミーでは、DXを自分事として捉えられる「リテラシー」、担当業務に応じた対応力を強化する「基礎スキル」、そしてデジタル技術を活用し、ビジネス上の課題解決を具体的な施策として推進できる「プロ化」の、3層でのDX人財育成が必要だと考えています。この階層構造に基づき、日立グループでも当初はプロ化の育成から始め、やがてベーシック研修を拡大し、2020年以降はリテラシー研修を展開・推進しています。その中でもリテラシー研修の対象はグループの全従業員。ここまで規模の大きいDX教育を進めている例は、国内ではほとんどありません。