-"スマホを使わなかった日"の日記-
2016年3月24日'ひと'とITのコラム
私が入社した当時は、人とのコミュニケーションを行う手段は直接会話、電話、手紙でしたが、現在は電子メール、Facebook、LINEなどIT技術を活用したコミュニケーションへとそのスタイルが大きく変化しています。そして、それはコミュニケーションだけではなく、気がつかないうちにいつのまにか'便利'ではなく'普通'のことに変化しています。さて、ある日突然、コミュニケーションの手段が直接会話、電話、手紙だけになったら、貴方は仕事・普通の生活ができますか?
第15回のコラムで、「ITを使わない日」の制定について触れましたが、先般日曜日に実践してみました。今回は、このときの様子を小学生の日記風に書いてみました。
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寒い駅であまり待ちたくなかったので、いつもはスマホで瞬く間にわかる電車の時刻を、駅で配っていた小さな時刻表で調べました。 久しぶりに見る時刻表の文字はあまりに小さく、私は「あぁー、歳をとったなぁー」と悲しくなりました。 それから、時刻表の見方も忘れていました。 調べた時刻は平日の時刻で、その日は日曜でした。 時刻表の裏面を見なければならなかったのですが、すっかり忘れていました。
駅まで歩いて行くと、改札口辺りに人がたくさんいました。 何だろうと思って電光掲示板を見たら、事故で電車が止まっていました。 いつもは事故があるとメールで知らせが来るのですが、今日は不意打ちを食らいました。 運転再開予定はあと20分。 仕方ないので駅にあるコーヒーショップでコーヒーを飲むことにしました。 アメリカンコーヒーを頼んでいつもは電子マネーで「シャリーン!」でしたが、今日は1000円札を出しておつりをもらいました。 久しぶりに重くかさばる小銭入れでした。 コーヒーを飲む間がヒマでした。 仕方なく窓から外を見ていると、いつも眺めているはずの風景の中で店の名前が変わっているなど、気づいていないことがたくさんありました。
やっと電車が動き始めたので、改札を通ろうとしたら「ピッ!」がありませんでした。きっぷを買わないで乗ろうとしてしまいました。 券売機のところまで行きましたが、いつの間にか券売機の数が少なくなっていました。 きっぷで通れる改札機も少なくなっていました。 きっぷもなくしそうで怖かったです。 電車の中はヒマです。 やることがないので久しぶりにつり広告をじっくり読みました。 つり広告には多くの情報があることを改めて感じましたが、首が痛かったです。
買い物をしたときに、悲しいことがありました。 カメラ量販店のポイントカードがスマホに入っているので、ポイントを付け損なってしまいました。 しかも小銭がたくさんあるので出来るだけ使おうと思ったのに、1円玉が一つだけ足りなかったのでかえって小銭が増えてしまいました。
帰り道に「そうだ! 床屋に行こう!」と思いました。 予約をするために駅で公衆電話をさがしました。 ありませんでした。 駅から少し離れた所に電話ボックスがありました。 いつも朝夕通っている場所なのにまったく思い出せませんでした。 電話ボックスに入って受話器を持ったときにふと気づきました。「床屋の電話番号、何番だっけ?」。 電話帳はスマホです。 記憶にはまったくありません。 電話番号が分らない時の電話は、まったく価値がありませんでした。 家に帰ってから床屋のポイントカードを探して電話をしました。
予約の時間、雨が降り出しました。 車で行くかどうか悩みましたが、車はITではないことにして車で行くことにしました。 人間はどんどんぜいたくに慣れるんだなぁ と思いました。 車に乗ったときにカーナビは消して見えないようにして、ラジオだけ鳴らしました。
床屋の帰りに友達と会いました。 久々の出合です。 時間は18時15分。 少し話をすることにしたのですが、家に少し遅くなることを伝えないと、夕飯がなくなってしまうのですが・・・やはり公衆電話がありませんでした。 友達がスマホを貸してくれると言ってくれたのですが、初心貫徹! でも公衆電話はありません。 ピンチ! 今日は私がスマホを使うことを封印したのであって、私の用事で他の人がスマホを使うことまでは封印していない、ということにして、友人に我が家に電話をしてもらいました。 この結果、家ではわざわざ友人が電話しなければ信用されない状況、という間違った雰囲気を作ってしまいました。
帰りにコンビニで買い物をしました。さすがに一日たったので、電子マネーを使おうとはしませんでした。 今日一日でたまった小銭を出来るだけ使おうと思いました。 いっぱい入った小銭入れから必要なコインをすばやく取り出すのは、それなりにコツが必要でした。 レジに多くの人が並んでいたので、よけい焦ってしまいました。 顔なじみの店員さんが見かねたのか「慌てなくても大丈夫ですよ」と言ってくれました。 うれしい気持ちになりましたが、買い物慣れしない手先が不器用な老人になった気分にもなりました。
今日一日スマホを使わないことでわかったこと。
これからは、スマホなしの原点を見失わないスマホの便利さとの付き合い方を考えていこうと思いました。
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後日談、公衆電話の位置をスマホにメモってしまっていました・・・
技術士(電気・電子部門)
株式会社 日立アカデミー
主幹コーディネータ
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事
日立製作所でシステムエンジニアリングの経験を経て、2009年に日立インフォメーションアカデミー(現:日立アカデミー)に移る。企画本部長兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。2011年以降、主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施を担当している。
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