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株式会社 日立アカデミー

知的創造活動としての「会議」

-「会議」のルールを可変とする-

2015年8月5日'ひと'とITのコラム

私たちが組織人として日々仕事を進める中で、会議、打ち合わせはかなりの時間を占めています。ITを活用することにより昔に比べ会議などのやり方、進め方は格段に変化しましたが、一方で無駄な会議が多いとか長いとか会議に不満を持っている人も多いのではないでしょうか ...。

 ITの浸透は仕事のやり方を変えました。メールの活用をはじめとするワークスタイルの変革で大きく変わったもののひとつが「会議」でしょう。効率を求める視点からは、いちいち多くの人が集まらなくてもプロセスが適切に進む姿が望ましいです。IT活用でより多くの「無駄な会議」が減ってきたのも事実です。しかしこの過程で、「会議の諸悪の根源説」なるものが広まってしまったように感じます。会議の目的に関係なく会議そのものが悪であるかのごとく捉えられるようになってはいませんか? 昔、会議の時間は無制限が当たり前だった時代が、「会議は2時間で!」という時代となりました。今は「会議は1時間!」。

 この「会議」、何が何でも"削減"という方向感で良いのでしょうか?

 そもそも「会議」とは何でしょうか? 広辞苑によると、『会議:会合して評議すること。何かを決めるため集まって話し合うこと。その会合』とあります。評議とは『種々意見を交換して相談すること。』とあります。つまり「三人寄れば文殊の知恵」、すなわち色々な意見や考えのシナジーを創出する「場」が本来の意味での「会議」なのでしょう。

 ところで、「会議」と十把一絡げで括ってしまいますが、その目的はさまざまです。

  • ① 結論を出す会議  ② 報告をする会議  ③ 共有を図る会議  ④ ある事柄を 評価したり発展させたりする会議 等々

 本コラムでもたびたび触れてきたように、ITであらゆる基盤が構築された時代だからこそ、「脳のコンピュータ」('ひと'とITのコラム 第7回)の活用環境が大切となります。単なる報告や共有のための会議はIT活用などにより多彩かつ最適な代替手段がありますから、どんどん置き換えるべきでしょう。これらは多くの「脳のコンピュータ」を連動させることが必ずしも目的ではないからです。しかし、アイデアや発想が求められるような場面・・・例えば顧客向けの提案書で将来の夢を語る、市場動向の情報を多角的に分析・評価するなどの場合、多くのしかも多種多様な「脳のコンピュータ」を連携させることが望まれます。まさに「会議」の本来の意味が目的です。

 先に述べたように必要な会議も出来るだけ効率化! 時間厳守! 建設的な発言を!... 「会議」としてではなく「脳のコンピュータ」の連携の「場」としての視点で考えると、これは正しいのでしょうか? 中途半端な結果を招くだけとはならないでしょうか?

 例えば時間、「脳のコンピュータ」がようやくフル稼働し始めたときに予定の時間が来たから打ち切り! 続きは後日!では、また「脳のコンピュータ」をフル稼働させるまでに時間がかかりいつまで経っても知的な価値創造にまでは到達しません。

 また、建設的な発言、建設的というのは多くの場合机上の空論ではない、根拠のある発言、思いつきではない内容 等々どちらかというとロジカルな発言を指すことが多いと思います。特に製造業など技術に根ざした事業を生業としている組織ほど、この傾向が強いでしょう。これは「会議」の目的によっては大切です。トラブル対応などで思いつきだけの発言では困ります。しかし、先ほど例示した『顧客向けの提案書で将来の夢を語る』ための「会議」では、色々な観点からの発想やアイディア、創造性が重要です。そこに「夢」が描かれます。思いつきや感性、前提/前例によらない発言が望まれます。長年築かれてきた文化はなかなか変えられません。特に若い人の思いつきの発言を封じ込めてしまうのが今の会議体でしょう。人財育成の面からもそのような発言をたしなめることも必要です。

 ではどうすれば良いのか?

 会議のルールを設定する文化を築くことが必要なのではないでしょうか?

 「会議」の設定時に目的を明確にし、その目的に応じて「今日はロジカルルール」、「今日はクリエイティブルール」など発言ルールを定める。ブレーンストーミングのような「脳のコンピュータ」の稼働を前提とする場合は、一応の終了時間は設定するが、あくまでも目安とし延長もあり、従って次の予定に余裕を持たせることを開催ルールとする。このような形で目的に最適化した「会議」によって知的な価値を創出する、これが本来の意味で"効率化"なのではないかとも思います。

 IT活用で利便性の向上、効率の追求が当たり前の時代だからこそ、意識して知的創造という「脳のコンピュータ」を最大に稼働させる環境を、ITに寄らないで創り運営していくことが大切なのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

永倉 正洋

技術士(電気・電子部門)
株式会社 日立アカデミー
主幹コーディネータ
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事

日立製作所でシステムエンジニアリングの経験を経て、2009年に日立インフォメーションアカデミー(現:日立アカデミー)に移る。企画本部長兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。2011年以降、主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施を担当している。

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