企業内大学だからこそ醸成できるカルチャーと価値
川 村普遍的なスキルや教養は、単なる知識習得ではなく、他の人との対話と議論を通じて血肉化されるものですよね。これをグローバル規模でどう展開するかが思案しどころです。
安部氏普遍的な知識についてはビジネススクール等の外部パートナーを活用していますが、ソニー独自のプログラムの意義として、ソニーの歴史や過去のリーダーの振る舞いを通して、ソニーの企業理念や文化の本質を理解し、それを発揮する人間力を形成することに主眼を置いています。ここで重要なのが多様性です。異なる事業背景を持つメンバーが議論することで、化学反応が生まれ、深耕が進みます。
川 村なるほど。ところで長期的な育成という考え方は、日本では定着しているものの、海外では定着しておらず、若手の選抜に苦労することがあります。参加者の選定についてはどのような工夫がありますか?
安部氏ジュニア層では、敢えて自発的な公募枠を設けています。学ぶ意志がある層は教育効果が非常に高いからです。一方でミドル・シニア層は、会社が一定の職責を委ねている以上、本来、各組織がしっかりと選抜できるべきであると考えています。以前、日立さんが求めるリーダー像を明文化されていると伺い、大いに参考にさせていただきたいと思いました。指標が明確だと選抜もしやすくなりますね。ソニーでは経営陣がユニバーシティの価値を深く理解して選抜自体を重く捉えてくれており、自事業からの参加者の名前を良く覚えています。これは運営側としても大きな励みになります。
この研修への参加は「会社があなたに期待している」というメッセージでもあります。中でも数年おきに上位ステップのコースに参加する社員には、投資されている実感がより強く生まれ、エンゲージメント向上にも繋がっています。
川 村経営層のコミットメントは不可欠ですね。ただ、海外の優秀な人財を日本側が完全に把握しきれていないという課題もあります。そこで、北米・欧州・インドなど各リージョンや全社レベルでの「One Hitachi」を強化し、各所で選抜された多様な人財について、地域や組織を超えて一体で議論する場を作りたいと考えています。共通の価観を持ちつつ、異なる背景を持つ人財がぶつかり合う場を、グローバル統一とリージョン育成の組み合わせで実現していく予定です。
安部氏ソニーの場合は地域よりもビジネスユニット(BU)ごとのオーナーシップが強いため、各BUのCHROと定期的に選出基準や将来の人財像について話し合い、方向性を合わせています。BU独自のプログラムと、グループ全体のプログラムを戦略的に連携させることを意図しています。
川 村BUごとの独自性とグループ共通のプログラムの内容はどう切り分けているのでしょうか?
安部氏ユニバーシティには25年の歴史があるため、各部門は「ここで何を学べるか」を良く理解してくれており、自然とBU独自プログラムとの役割分担ができています。部門によっては同じ人財に対し、年度ごとに派遣するプログラムを使い分けているところもあります。