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株式会社 日立アカデミー

ITが社会に浸透している

- 最近の出来事から -

2019年4月1日'ひと'とITのコラム

2019年は新元号の元年ですが、この新たな時代の幕開けから少し早く、4月1日に新設、株式会社 日立アカデミーが始動する新たなる年です。
「'ひと'とITのコラム」は、当社主幹コーディネータ 永倉が、企業経営の重要な位置を占めているITとそれを使う'ひと'に注目し、業種・業界を超えて、今、求められる'ひと'について語るコラムとして、2014年1月24日にスタートしました。このコラムがみなさまの人財育成を考えるきっかけになれば・・・という思いで語り続け、今回で33回を数えます。
ITが社会に浸透していく中で、新し尽くしの年で身も引き締まるこの折に、あらためて永倉はITとそれを使う'ひと'について何を思うのか・・・。どうぞコラムをお楽しみください。
(コラム担当記)

 今上天皇の生前退位に伴い、新元号に関して平成31年(2019年)4月1日に閣議決定後公表し2019年5月1日から新元号となることが発表されています。 昭和64年(1989年)1月7日昭和天皇が崩御された時は、その日に平成の元号が発表されています。 慶応4年(1868年)に明治元年に改元されましたが、そのときに一世一元と決められました。この一世一元は、天皇在位中は元号の改元はないということですので、今回のケースはこの原則を破るのではないか、新天皇が即位してから新しい元号が発表されるべきではないか、という伝統を重んじる意見も根強くあったとも報道されていました。 今回は伝統よりも「国民生活に大きな影響を与えない」ことを優先して事前に発表することが決められたということです。 「国民生活への影響」の最大要因はITシステムの改修と言われています。 たしかに身の回りでITシステムが扱うデータで和暦を使っているものは非常に多く存在します。 突然改元されると、一定期間和暦が記載されない情報が発生し、さまざまな影響が及ぶと予想できます。 税金や住民票などの役所関連や金融機関等申し込み書等の生年月日や記入日などいろいろ予想できます。 この改修を全てのITシステムで一か月の期間で終わらせることも大変です。 ITシステムの改修が間に合わない場合を想定して行政関係では証明書類を訂正印で訂正する、電子申請などで平成表記も有効であるという証明書を発行する、後日新年号表記のものと交換する、などの対応策も決定されています(民間は各企業ごとの対応)。 ITシステムが存在していなければ、手作業での対応ですので大変は大変ですが、柔軟な対応が容易に出来る気もします。 もっとも変化に柔軟に対応できる"システム"は人なんだと改めて認識させられます(第23回のコラム 「人間は、すごい!-ムンバイの「ダッパーワーラー」に学ぶ-」を思い出します)。

 この今回の改元の一連の流れは、ITが社会に浸透し、日本の長年の伝統をも変える(超える)存在となっていることを如実に物語っています。



 「GAFA(ガーファ)」、最近ITの現場だけでなく一般のニュースでも使われています。 Google、Apple、Facebook、Amazonという多くの人が知ってか知らずか利用しているサービスなどを提供しているIT系グローバル企業の総称です。 ちなみに2018年11月末時点での4社の時価総額は合計300兆円超、日本の株式市場全体の時価総額の約半分と言われています。まさに"巨人"です。 ところで、2012年頃、「GAFMA(ガフマ)」という言葉が使われていたのはご存じでしょうか? Google、Apple、Facebook、 Microsoft、Amazonの総称です。 約5年でGAFMAからGAFAに変化しました。 Microsoftが抜けています。 MicrosoftもIT業界に止まらず多くの人が"巨人"として認知している企業です。 けれども5年間で外れました。 何故でしょう? 2012年から2018年の間でITに求められるものが変わったということなのでしょう。 もう少し言うと、ITが提供する環境が変わったという方が実体に近いかも知れません。 何が変わったのか?

 IT黎明期、基本的にはITシステムは個別に構築・設置されていました(スタンドアローン)。 しだいにコンピュータ通信からネットワークでITシステムがつながりました(ネットワークコンピューティング)。 さらににインターネットの活用でいつの間にか社会でのITシステムが点から線、そして面と拡がり、社会でITシステム環境が隅々に行き渡る環境が出現しました。 言うなればハード的な環境が構築されました。 この環境で次に大きな変化をもたらしたのがWebシステムでしょう。 Webは今さらですがWorld Wide Web(ワールド・ワイド・ウェブ)の略で、ハイパーテキストという仕組みを利用してインターネット上のさまざまな情報を関連付け、つなぐシステムです。 このWebシステムの普及は何をもたらしたのでしょうか? この概念を1989年3月に最初に提案したTim Berners-Lee氏は当時、「あらゆる場所のコンピュータに保存されている情報が、全てリンクされているところを考えてみてほしい。自分のコンピュータをプログラムして、あらゆるものを、あらゆるものにリンクできる空間を作れると考えてみてほしい」と書いたそうです。 それまでに構築されたハード的な環境という仕組みから、そのうえでやり取りされる情報を扱う仕掛けへと環境が大きく変わった原点がここにあるとも言えます。 似たような変化は他にも起きています。

 VAN、Value Added Networkの略です。 日本語では付加価値通信網と訳されていました。 1980年代に起きたコンピュータと言うよりは通信のビッグバンです。 自前の回線を持つ第一種事業者から回線を借りて,より高度な付加価値のついた通信処理を行う第二種電気通信事業者のサービスの一つとして提供されました。コンピューターに入っている情報をファクシミリで転送するメディア変換,使用言語の異なるものを統一のフォーマットにするフォーマット変換などのデータ処理が機能として織り込まれていました。 データの送受信単独機能の環境にデータを"いじる"機能が備わった環境の出現です。

 さらにCALS、Commerce At Light Speedの略です。 製品やサービスの情報を共有し、設計・生産・調達・決済までの全てをネットワーク上で行うための標準規格で、当初は1980年代に米国国防総省が軍用資材調達の支援システムとして開発しました。 当初フルネームはcomputer-aided logistics systemと呼ばれていましたが、その後応用分野が拡がり、computer-aided acquisition and logistic support、continuous acquisition and life-cycle supportへと変わり、企業間、組織間の情報交換・情報共有をペーパーレス化して取引の全プロセスを飛躍的に効率化する生産・調達・運用支援統合情報システムを指すようになりました。 EDI(電子データ交換)、SGML(図柄・言語の標準化)の普及を促進し 特に建設分野でのCALSが運用されています。 民間でもボーイング社が航空機の製造のグローバル分担化を支える重要な要素となっています。

 さて、長々と書いてきましたが、ITは社会でハード的な環境により普及してきましたが、節目節目でデータ・情報を巻き込んだ環境を構築することで、多くの生活者・企業・公共組織に大きな価値を提供してきました。 この節目は情報を巻き込んできました。 すなわち情報流通が加速的にIT環境に組み込まれ、個々人や企業などの個々の組織が加工する対象ではなくなってきているように感じます。

 このように俯瞰してみると、GAFMAからMicrosoftが抜けてGAFAとなったのもわかる気がします。 すなわち「ITが社会に浸透している」という文脈は「情報流通基盤が社会に浸透している」ということなのでしょう。 日本では、手作業だった業務プロセスを個別にプログラム化していた時代が一段落し、パッケージやSaaSの導入がこれからの大きな潮流となりそうです。 このパッケージ、SaaSを導入するということは、同じものを入れた企業は同じ業務をしていることになります。 いつのまにか情報だけでなく業務プロセスも基盤化して行くということです。 生活の場面でも同じことが起こるのでしょうか?



 多くのプロセスが環境(プラットフォーム)として提供され、多くの人が同じものを使う便利さ。 社会や時代の変化を捉え、伝統であっても必要があれば変えることを優先する存在感。 ITが社会に浸透していることは素晴らしいのですが、味気ない気持ちにもなります。

執筆者プロフィール

永倉 正洋

技術士(電気・電子部門)
株式会社 日立アカデミー
主幹コーディネータ
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事

日立製作所でシステムエンジニアリングの経験を経て、2009年に日立インフォメーションアカデミー(現:日立アカデミー)に移る。企画本部長兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。2011年以降、主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施を担当している。

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