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株式会社 日立アカデミー

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-最近、思うこと-

2015年5月11日'ひと'とITのコラム

皆さんは最近どのようなことに疑問をもちましたか? 人間だからこそできる、疑問をもつということは、"気づき"への絶好のチャンスでもあります。今回のコラムはこんな話からスタートし、最近永倉が気づいたことをいくつかまとめてみました。

 ふと気づくと、本コラムではITが人に及ぼす影響について触れていることが多くなっていました。誤解がないように言っておくと、ITを否定しているのではありません。ある意味オーガニックに浸透し社会に融合してきたIT。これからはしっかり人の成長や進化とのバランスを考え、更なる浸透・融合をコントロールしていくことが大切ではないか、という思いです。ITのコンピュータと脳のコンピュータの最適な共存(シナジー、融合)の模索です。そのためには、ITのコンピュータの特徴、脳のコンピュータの特徴を今一度考え、互いに不得意なところ、出来ないところを補完し合うことが早道でしょう。今は、どちらかというと、脳のコンピュータでもできることを、ITのコンピュータで補うだけでなく置き換えることが多い気がします(これが人の退化につながる懸念を書いてきました)。

 最近脳のコンピュータにしかできないことのひとつが「疑問を持つ」ではないかと思っています。ITのコンピュータも、あらかじめ決められたロジックから外れた場合に疑問を呈することは出来ます。しかしこれは「疑問」ではなく決められているロジックからの逸脱の警告に過ぎません。我々の脳のコンピュータが抽出する「疑問」は、決して何かしらが決められているコトに対するものだけではなく、なぜ疑問になるかすらわからないことも多いわけで、言わば「気づき」や「発想」に近いものがあります。第六感というのもこの部類かもしれません。しかし、人は合理的な側面も持ち合わせていますので、ふと思いつく「疑問」に対して冷淡です。せっかく思いついても、その時に流れに影響しなければ、その疑問の解消は後回しにし、結局は忘れてしまい「なかったこと」になります。

 一旦疑問を持てば、昔と違いITのコンピュータを利用すれば飛躍的に短時間かつ詳細に解答/解決することが出来ます。ここは、ITのコンピュータの得意分野です。

 脳のコンピュータしかない「疑問を持つ」という機能とITのコンピュータが得意な「調べる」という機能。これを活かさない手はありません。「くだらない」とか「当たり前」、「時間が勿体ない」などで、せっかくの気づきのチャンスとそこから得られる脳のコンピュータ/ITのコンピュータだけでは得られない価値を捨ててしまうのは勿体ないと思います。

 例えば・・・

  • 交番に掛けられている「昨日の交通事故件数」、鉄道や飛行機の事故件数はなぜカウントされないのか?
  • セールスをなぜ「営業」というのか?(業を営むは経営では?)

 調べてみようではありませんか。

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 最近ビッグデータ関係の講演を聴きました。その時に思ったこと・・・

 その講演はビッグデータサービスの提供に関するものでした。基本的なプロセスは、ある企業Aが自らが持ち合わせないデータ(このデータは別の企業Bが持っている)も対象として、自らのビジネスに必要とする解析結果をサービス提供者から手に入れる、ということになります。サービス事業者は企業Bとの間で契約等の許諾行為のもと、そのデータを活用します。この枠組みを拡げて考えれば、企業Bは自らが持ち合わせていないデータも含んだ解析結果が欲しく、そのデータは企業Aが持っているかもしれません。するとサービス事業者は企業Aとデータ活用の許諾のもと解析を行います。見方を変えるとサービス事業者のもとには、企業Aと企業Bのデータが集まっていることになります。当然、素データそのものではなく色々な形で加工やデフォルメされてはいますが、社会で役立つための意味合いは持っています。

 このサービス事業者が顧客を増やしていくとどうなるのでしょうか? サービス事業者とその顧客全体でデータが集約されバーチャルなデータベースがひとつ存在することになります。他のビッグデータサービス事業者の周りでも同様な状況となります。するとビッグデータサービス事業者も各々得意分野を持ちますので、ビッグデータ解析価値のシナジー化、すなわち連携した関係が築かれることは容易に想像できます。この流れの行き着くところは、社会でバーチャルなデータベースがひとつに集約される状況が創出される、ということかもしれません。このひとつのデータベースは社会の「写像空間」となります。管制システムはリアルな対象をセンサー等でデータ化してITシステムの対象としています。限られた範囲での「写像空間」です。センサーネット、IoT等リアルな事象とITフィールドを結びつける技術はどんどん進化しています。さまざまな交通系非接触型カードやウェアラブル端末、さらにはマイナンバー制度等人とITのつなぎも進化してきています。いつの日かこの社会はひとつのデータベースを使えばすべてリアル社会が覗ける。しかもリアル社会ではむずかしい4D:時間軸変化の可視化という環境まで手に入れることができるのでしょう。

 ビッグデータという技術は、社会のあり方をも大きく変化させるのかもしれません。

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 ドローンが社会を賑わせています。

 少し前はアマゾンが宅配に利用する、とかロシアのピザショップDoDo Pizzaがドローンを使った最初の無人ピザ配達を成功させた、というロジスティックの革新絡みの話題で盛り上がっていたのですが、今度は首相官邸への不法侵入(?)です。技術の活用は善悪裏腹の関係であることを再認識させられました。過去を振り返ると"悪"に分類される方が高度な進化が早いかもしれません。

 巷では悪用防止のための「規制」の重要性が論じられています。これも大切でしょう。ただし、麻生副総理・財務大臣・金融担当大臣も触れていたのですが、建設現場等での有効活用を阻害するのでは本末転倒です(麻生さんが建設現場を出してきたのはさすがセメント会社、と妙に感心しました)。前回のコラムで書いたようにITの的確な進化を促すためのルール作りも同じことが言えるでしょう。ただし、「脱法ドラッグ」で明らかになりましたが、正しい活用を締め付けないようにすると必ず抜け道ができ、いたちごっこの状況を作ってしまうことになります。この抜け道を考える能力は、ぜひ逆の方向で発揮してもらいたいものです。

 ドローンに話を戻します。今回首相官邸で発見された翌日には、ドローンのメーカが対策を実施しました。そもそも飛ばしてはいけないエリアの手前で着陸させる機能が組み込まれているそうで、首相官邸もそのエリアとして登録するというものです。これはGPSによる緯度経度情報を使っています。

 GPSによる位置情報の検出。上で述べた「社会の写像空間」を構成する基本的情報でもあります。GPSの活用は、我々の生活においてカーナビがその恩恵を感じた最初のものです。今は、さまざまな形で活用されています。ドローンの機能の逆の機能が、スポーツタイプの自動車の一部で使われています。日本では自動車は自主規制のもと、最高速度は180Km/hとなっています(法令的には100Km/hなのに自動車の性能は180Km/hなのか?これも疑問の気づきです。ぜひ調べてみてください。ただし、諸説ありますが...)。しかし、高性能な自動車を買う人は、サーキットのような法令の及ばないクローズドエリアでは思う存分スピードを楽しみたい...そこで搭載されたのが、サーキットの位置を組み込んだ制御装置がGPSのデータで該当場所に来るとスピードリミッターを解除するというものです。

 GPSの活用はもともとは軍事領域でした。その民間転用でさまざまな価値が生み出されています。今回のドローンの対策はテロ防止、すなわち反軍事の方向での活用とも言えます。現在ITはさまざまな技術と組み合わされています。ITリテラシーはすべての人を対象に考えなければならない、と改めて考えさせられた今日この頃です。

執筆者プロフィール

永倉 正洋

技術士(電気・電子部門)
株式会社 日立アカデミー
主幹コーディネータ
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事

日立製作所でシステムエンジニアリングの経験を経て、2009年に日立インフォメーションアカデミー(現:日立アカデミー)に移る。企画本部長兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。2011年以降、主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施を担当している。

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