-IT人財は多変数連立方程式を解かなければならない-
2014年1月24日'ひと'とITのコラム
『'ひと'とITのコラム』は、当社主幹コーディネータ 永倉が企業経営の重要な位置を占めているITとそれを使う'ひと'に注目し、業種・業界を超えて、今、求められる'ひと'について毎月お届けするコラムです。
第1回は、『コラムを始めるにあたって-IT人財は多変数連立方程式を解かなければならない-』
というテーマで、このコラムがみなさまの人財育成を考えるきっかけになれば・・・という思いを語ります。
ITは色々なものやこと(場面)に溶け込んで、社会の豊かさを支える必要不可欠の存在となっています。言うまでもなくITは"技術"。では"技術"とは何か? 広辞苑によると『【技術】物事をたくみに行うわざ。技巧。技芸』と『(technique)科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てる技』とあります。すなわち、ITとは「社会の中で情報の利活用による価値を巧みに創出して、人間生活に役立つようにする」と解釈できます。キ-ワ-ドは「巧みに」と「役立つ」。巧みでなく役に立たないものは"技術"ではないということです。
ITという"技術"を、人間生活に役立つ価値を創るための"道具"へ、巧みに変換することを求められているのがIT人財です。では、求められる技術力やスキルはどういうものなのでしょうか。
IT黎明期は、ITという技術そのものの進化を見ていればIT人財もIT人財を育成する人もやるべきことを容易に知ることができました。しかし、ITが社会に普及し溶け込むようになってくるとわからなくなってしまった・・・。役に立つ道具は社会に溶け込んでしまったから、技術そのものを見るだけではだめ・・・。溶け込んでいる社会(ビジネス)そのものを知り、そこで必要となる道具のあるべき姿を想像し、ITがそれに応えられるか等々を見抜く力やスキルが必要となっています。社会もITも多様化しアジリティ化しています。多変数連立方程式を解かなければならなくなっている。これは大変。しかも、新しい道具を社会に投入すると、自ら変数を増やしてしまうという自虐構造!
イノベ-ションの創造が重要だと言われています。イノベ-ションはビジネスの現場とITの境界領域で起こりやすいとも言われています。これまでにない新たな「巧み」でITを道具に変換することを求めているのがイノベ-ションとも言えるでしょう。「巧み」とは『考えをめぐらして見つけた方法。工夫』。そこには「考えをめぐらす」「工夫」という人間の知的創造でしか為しえない要素が求められています。IT人財には、従来とは違う多様な視点での発想や着眼、感性が求められているということです。技術や社会と真正面に向き合う視点だけではなく、敢えて非常識な発想などいつもとは異なる視点での気づきが、大きなポテンシャルとなります。
この〔'ひと'とITのコラム〕は、「これまで当たり前と思っていたこと」、「マクロに俯瞰すると見えてくること」、「自らの価値観を外すと見えてくること」など、コラムを読んでいただける方がいつもとは違った視点で見たり考えたりするきっかけとなり、多様な発想や気づきによる新しい価値創造の端緒につながるのではないかとの思いで始めることにしました。コラムの内容がダイレクトにお役に立つかはわかりませんが、このような見方、考え方もあるのか、という軽い気持ちでお読みいただければ幸いです。
技術士(電気・電子部門)
株式会社 日立アカデミー
主幹コーディネータ
一般社団法人 人材育成と教育サービス協議会(JAMOTE)理事
日立製作所でシステムエンジニアリングの経験を経て、2009年に日立インフォメーションアカデミー(現:日立アカデミー)に移る。企画本部長兼研究開発センタ長としてIT人財育成に関する業務に従事。2011年以降、主幹コーディネータとしてIT人財に求められる意識・スキル・コンピテンシーの変化を踏まえた「人財育成のための立体的施策」立案と、 組織・事業ビジョンの浸透、意識や意欲の醸成などの講演・研修の開発・実施を担当している。
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